Now I'm here 2-3

僕はここにいる 2

Now I'm here 2-3



 信じられない、自分が沙羅以外の男の腕の中にいることが。

 あの時……迫りくる隕石を魔導師たちのエネルギーを集めて破壊した時は、それだけで 全てが終わったような気持ちがして、もうすでに他の何もする気力もエナジーも目的も残っていなかった。

 そう、あの時は必死だったからこんな結末が待っているなどとは思いもしなかった。

 殺されるかと思った侵入者からの拘束も辱めは受けたがそれは瞬間の事だった。

 もう何日も……いや……何ヶ月もこうしてサフィアのハーレムに入れられて サフィアの思うままに身体を貪られている。

 「まだ、子は出来ぬか?愛し方が足りぬのかもしれぬ」

 などとサフィアにふざけた事を言われて朝となく昼となく抱き締められ、欲望の飛沫を注ぎ込まれていた。

 実はグレナはサフィアに悟られぬようにこっそりと避妊していた。

 サフィアの子を妊娠する事だけは絶対に避けたかった。

 「いっそ男性単体ならよかった」

 グレナは幾度そう思った事だろう。この戦いに出た時は死を覚悟していただけだったから、死よりも恐ろしい こんな屈辱が待っていようとは思ってもいなかったのだ。

 数カ月なんとか事なきを得た。

 だが、ある日、サフィアは血相をかえて二人の寝室にやってきた。

 本当はこの豪奢な造りの寝室はサフィアだけのものだったのだが、常にグレナを手許に置きたがり、時間が許せば、グレナの身体を貪るサフィアにとって、この寝室にグレナを拘束する事が自然な流れだったのだ。

 「沙羅とはどういう関係だった?」

 沙羅の名前が出てきて血の気が引いた。

 なぜ、今さら沙羅の名前が出てくるのか?

 「番いというのはまことか?」

 「つがい?私も沙羅も動物ではない。夫婦ともいえる関係で……」

 最後までグレナが話すのも許さず、サフィアは思いきりグレナを壁に叩き付けた。

 「ふざけるな……誰が今の主人か思い出せ?まさかお前が今まで子を宿さなかったのは、その沙羅とか いう牡に操を立てたのではあるまいな?」

 そうだといったら?

 昔の石榴なら間違いなくその挑発を受けていただろう。

 だが、今のグレナは沙羅の安否こそが何よりも大切だった。

 無言でサフィアを睨み付けたが、その様子がなにより沙羅への愛情を雄弁に物語る。

 「医者だ!医者を呼べ!グレナの身体をあらためろ。ちゃんと子が宿せるようになってないかな」

 サフィアは地響きのような声を唸らせると、飛んできた医者の胸ぐらを掴んだ。

 「いま、ここでグレナの身体をあらためるのだ。今すぐにだ!」

 即行、グレナの身体はあらためられ、小さな避妊具がサフィアに差し出される。

 「ふざけた真似を……グレナ……」

 サフィアの表情は今までに見た事もない程の怒りに溢れていた。 グレナは恐ろしいと思うより先に、いつもいくら怒ってもどこか余裕のあったサフィアがこのように 取り乱すのがなんとも言えぬ気持ちになった。

 胸の奥が締め付けられるように辛い。

 「下がれ!他の者は皆下がれ!」

 奥歯をぎりぎりと噛み締めながらやっとその言葉を口にした。

 「なんとかいったらどうだ?何も言える訳などないか?ここまで愛おしんでやったのに、この仕打ちか?」

 憤懣やるかたないというように拳を握って寝室の近くにあった猫足の小テーブルを叩き飛ばす。

 「このまま、ばかにされたままで済むと思ったら大間違いだ」

 そういうと侍従を呼びつけた。

 「あの男を呼べ。女も一緒にだ」

 ほどなく二人の寝室に呼び出されたのは、身体を拘束されて縛り付けられた沙羅の姿と 華奢で優しげな顔の少女だった。

 沙羅と石榴……ここではグレナだが……二人は声もなく見つめあう。

 「沙羅……」

 グレナが堪らずに沙羅に呼び掛ける。

 その震える声に沙羅は微かに微笑んだ。

 「御無事でなによりでございます。石榴様」

 「互いによく見知った顔の様だな」

 サフィアがばかにしたように、沙羅に視線を送る。

 「沙羅……」

 「グレナ!近付いてはならぬ!」

 いつにもまして厳しい声でサフィアがグレナを制した。

 「お前が妙な事をすれば、沙羅もその妻も無事では返さぬ」

 「つ……妻?」驚いた表情でグレナは沙羅を見つめた。

 「沙羅の妻はすでに妊っておる。お前が愚かな事をしでかせば沙羅に危害が及ぶのだぞ」

 嚇すようにサフィアはグレナの腕を掴んだ。

 沙羅は血の気も表情もない顔で呟くように言った。

 「サフィアさまは、誤解なさっっています。 我が里では男性単体はどこかが欠落した者として蔑まれる運命の者。紅の王の血と藍の王族の血を色濃く お引きになる石榴さまとは所詮身分が違います。ただただ、お近くで仕えていただけの私です」

 グレナはそれをどこか遠いところで聞いていた。

 いつか沙羅にあえる事を望んではいたが、 こんな結末は予想さえしていなかった。

 「なんだ……ただの慰み者か?グレナも好色なことよ」


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