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Now I'm here 2-2 |
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グレナは瞳の端に涙を溜めたまま、一面ガラス壁の外を見つめていた。地下のハーレムよりは格段にましとはいえここからは、湖と遥かな山々、そして煙りのような雲の浮かんだ空しか見えなかった。 ここに初めて連れられてきた時は景色を見る余裕もなかったというのに、今は外に出る事なども無いのに、空の様子が気になったりする。 グレナはそんな自分を小さく笑った。今まで、いろいろな事があり過ぎた。
戦いに疲れ、意識を失っている間に沙羅と石榴は宇宙船ごと捕らえられた。 運の悪い事に、捕らえられた場所から慮って彼等に最も危険な種族と判断されたのだ。 そしてあらんことか石榴と沙羅は数人の医者と王子達の前で全裸にされ身体を確かめられる。 みつめる瞳、瞳、瞳…… 「珍しい種だな、人間に良く似てはいるが、こいつ……牡ではないか?」 「まてまて、ほら、ここに牝の機能もついているようだ」 「これが両性具有種というものか?初めてみるが……なかなかぞくりとくるものだな」 身体を改めると言うよりむしろ恥辱を煽ると言った方がよかったかもしれない。 「繁殖機能は完全なようだ……なんだお前、こいつに欲情するのか?それなら安全と判断されてペットとして放出されたら買うといい。たっぷり可愛がってやれるぞ」 医者達は下卑た笑いを浮かべて石榴の身体を撫で回した。 沙羅が捕らえられていなかったら彼は暴れだしていただろう。抵抗した沙羅は何度も殴られさらし者のようにぐるぐるまきにされて沙羅は近くに打ち捨てられていた。 このままでは沙羅が嬲り殺される……そんな恐怖が石榴を堪え難い屈辱にじっと耐えさせた。 その時、気高い声が医者達の蛮行を制した。 「それ以上その者を辱めるな。なかなか美しいし泣いたり喚いたりしないプライドの高いところが気に入った。私がもらい受ける」 あたりはしんと静まりかえった。緊張の糸がプツリと切れて石榴の意識もそこで途絶えてしまった。 その後、もう二度と石榴はその名で呼ばれる事はなかった。 気がつけばグレナと勝手に名付けられ、環境が変化した為か藍の大地で使えていたはずの強大な魔法もなぜか封じ込められていた。 グレナを買った巨大ハーレムの持ち主の男の名をサフィアという。名前の通りの美しく深く蒼い瞳をもち、この国の第2王子であるらしい。 強大な権力と莫大な財産を持つ彼は、第2王子でありながら 病弱な皇太子を差し置いて一番の権力者と目されていた。 そうしてグレナもサフィアの巨大な後宮に封じ込められたのだ。その数、数百人。 だが、そんな絶望的な状況にあっても沙羅と再び会うまでは希望を持ちたかった。 だから、どんな事をされてもグレナは自ら命を断ったりはしないと心に決めていた。 離された沙羅と必ず会えると信じていたから……。だがこの信じられないほどの屈辱にいつまで耐えられると言うのか。サフィアに毎晩両足を拡げられて拘束され穴のあく程見つめられた。そんな屈辱の中サフィアは感慨深げに呟いたものだった。 「お前は男でもあり女でもあるのか……だが、これからお前は私だけの女として生きるがいい」 そうは言われたがグレナが貴重な種ということで彼自身を切り取られる事はなんとか避けられた。 噂ではこの後宮にあらゆる種族の美しく高貴な乙女が捕らえられていると言う。王子の気紛れかそれは 巨大コレクションとも噂されていた。 だから石榴の身体も無事だったのだろう。だがそれは、喜ぶべきことか?それとも絶望するべきなの か石榴にも解らなかった。 ハーレムでは石榴以外にも様々な種族の美しい生き物が捕らえられていたが、彼女達は例外なく侍女と言う名の専用の看守に怯えるように暮らしている。 そんな様々な国から拘束されたり献上されたりしたハーレムの娘たちからグレナはサフィアのあれこれを 聞かされたのだった。 サフィアの美しい顔に似合わぬ程に残酷な性格や、ほしいままにこの国の権力を操っている事、そして終いにはハーレムの娘達も気に入らなければすぐに売り飛ばす。などと脅されたのだが、グレナは昔の自分を思い出して苦笑するだけだった。 そしてグレナは周りのハーレムの女達の嫉妬で身の危険を感じるほどに寵愛を一身に受けることになった。 だがどれほどサフィアに愛されてもグレナは殆ど身体は反応しても顔色を変えようとしなかった。そんなグレナをみてサフィアはますます意のままにならないグレナに夢中になっていった。 周りの者達が危惧する程サフィアがグレナにのめりこんでいるのが 誰の目にも明らかだった。 だが、誰もサフィアを恐れて苦言を呈するものなどこの城にはいなかった。 長老達は悩みに悩んだ挙げ句一つの作戦をたてた。 それはサフィアの幼馴染みの隣の王国シャンジェの皇太子エマラウドに白羽の矢をたてた。 最初は渋っていたエマラウドだったが結局周囲に請われてサフィアというネコに鈴をつける事になった。 「サフィア、お前は最近変わったよ」 「グレナの事なら聞きたくないな」 「いや、言わせてもらう。私しかお前に何かいえる兵はいないだろう?お前の立場は自分でわかっているのだろう?今のお前は尋常じゃない」 「それは自分でも自覚している」 「では少しは自制したらどうだ?朝から晩までグレナにのめり込んでいる。しかもグレナはサフィアを嫌がってると言う話だ」 「グレナの意志などどうでもいいことだ」 「そうとは思えん。ハーレムにはいっぱい寵妃がいるだろう。贔屓はいかんな」 「他のは欲しい奴に全部やる」 「なんだって?気でも違ったか?貴重な種がいっぱいいるだろう」 「グレナに子を産ませようと思っている」 「ますます、黙っておれないぞ。それは妃にするということか?」 「そうだ」 「よせ、それでなくても長老達の風当たりが強いのに」 「そんなのは放っておけ。産ませると言ったら産ませる」 「サフィア!良く聞け!グレナと一緒に発見されたサラという子は両性具有種ではない。牡の単種だよ。そしてあいつらは多分『番い』なんだ」 「つがい?」 つがいと聞いてサフィアの顔色が変わった。エマラウドはしまったと思ったがすでに放った言葉は戻ってはこない。開き直ってエマラウドは諭すようにサフィアの肩に手をかけた。 「そうだ、夫婦というほど彼等の文明は発達していないが、確かに番いなんだ。 だからどんなにサフィアがグレナを可愛がろうとも懐く訳がない。諦めろ」 「そうか、なるほどな。だとしたら尚更だ。もう少し懐いてから私のモノにと思ったが、もう遠慮はすまい」 「よせ、あの子は傷付いた瞳をしているよ。サラの元に返してやったらどうだ? あの子達が我々の送った隕石に何かの影響を及ぼしたにしてもしてないにしても お前のおもちゃにするのは危険だよ。飼い犬に噛まれる事になる」 「そんな力があってサラと情を通じ合ってるとしたら、もっと抵抗しても いいはずだ」 「愚かな事を……今はただ、お前は新しいおもちゃに夢中になっているのだ。子など産ませて、もし男子なら余所の種の世継ぎという心配も出てくるではないか」 「放っておいて欲しい。私は皇太子ではない、皇太子は兄上だ。世継ぎは兄の子、俺の子をどんな種が産もうと問題などない、私の勝手だ」 「サフィア!お前、本当におかしいよ。油断しすぎだ。グレナは見かけほど大人しくないぞ、しかも今のお前ならグレナに鼻毛まで抜かれそうだな」 「話がそれだけならもう帰ってくれ」 サフィアはエマラウドをにらみつける。エマラウドはサフィアの変わり様にため息をひとつ漏らして部屋を出ていった。 |