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予想以上に大きな白い火の玉が沙羅に向って突き進む。
グゥワン!
沙羅に大きな衝撃が走り疲労しかけた身体にエネルギーが漲る。 「……?真珠様?……真珠様がいらしてる……真珠さまがエナジーを注ぎ込んでくださっている……」 「あぁ、花珠と真珠はすぐ近くだ。意識とエナジーを感じる。沙羅……思ったよりお前と真珠のエナジーは巨大だ。もしかしたら、お前だけでも助かるかもしれない。さぁこのまま意識を『災い』に集中するのだ」 「石榴何度も言わせないでくれ……独りなら助からない方がいい。あなたと共に生きられないなら、このまま宇宙の塵になったほうがましだ……必ず僕らは助かるよ……そう信じよう。」 「……」 石榴を抱き締める沙羅の腕に力が隠る。石榴は『わざわい』を見つめながらただ無言で涙を流していた。 一方長い『災いとの戦い』に真珠の疲労も限界にこようとしていた。 意識が朦朧とする度、瀧海の暖かな温もりが身体から真珠の意識を勇気づけるが、時々意識を失いそうになった。 「もう……すぐだ。もう少しだけ我慢できるか?」 花珠の優しい声が真珠の頭上に落ちてきた。 「はい、父上」 ふと花珠をみやるとエナジーの使いすぎなのか花珠の意識は半透明化し、儚くなっている。 『災い』が完全に軌道を変えた頃には、花珠の意識はどこにもなかった。 真珠が意識を失いかけて再びなんとか意識を取り戻しかけた時には眩い白い沙羅と石榴を包んだ火の玉は、遠くなり宇宙の彼方に飛んでいこうとしていた。 「沙羅〜〜〜〜〜!石榴〜〜!戻ってきて!お願いだ……戻ってきてよ……」 真珠の意識はそこで途絶えた。 ついに『災い』は急速に『藍と紅』の二つの星から急速に遠ざかっていった。 双児星は互いに大きな歓喜と安堵に包まれた。花火が鳴り人々は街にくり出してお祭り騒ぎで 踊り出す。 殆どの者はいったい誰が『災い』と戦っていたのか聞かされていなかったが、『災い』が去っていった事 その事実が人々を狂喜させている。 そんな中、主人達が意識を失った瑠璃国はとてつも無く静かだった。 真珠と花珠はまるで眠り姫のように眠ったまま意識が戻らない。声をかけようとも揺り動かそうとも ぴくりとも動かない。瑠璃や第3皇子の玉髄(ぎょくずい)が殆ど一睡もせずに二人の介護をしていたが、 瀧海は自分のあまりの非力さに絶望しかけていた。 なぜ、自分は真珠を守ってやれなかったのだろう? 例え、国を捨ててでも真珠と共にいるべきだった。 大粒の涙が溢れ、真珠に降り掛かった。そのひと粒が花珠の額にもこぼれ落ちた。 花珠の瞼が微かに揺れ、瑠璃と玉髄が花珠に取りすがって「母上、母上!」と泣き出すと驚く事に 花珠の意識が少しずつ戻ってきているようだった。 微かに瞼を動かしながら何かを言おうとしきりに唇を動かしている。 瑠璃が花珠の手を掴んで握りしめるとぱっと花珠の瞳が開いてがばっと起き上がった。 「花珠……」 「母上様……」 瀧海と瑠璃が思わず声を揃えた。 「大声を出すな、頭が痛い……真珠は……真珠はどうした?」 「まだ、兄上さまは意識が戻りませぬ」 瑠璃が泣き腫らした瞳で花珠に訴えた。 花珠はふらつきながらもなんとか真珠に近付いてそっと唇を寄せて何かを唱えたようだった。 それから瀧海に向って微笑む。 「瀧海……真珠の意識が戻れるようにそっと口付けておやり」 瀧海はお許しが出たとばかりに真珠を掻き抱き狂おしいまでにキスをくりかえした。 真珠の頬に少しずつ赤みがさし、瞼が揺れる。 「た……瀧海……」 「真珠!」 「瀧海……どうして泣いている?……!」 「沙羅と石榴は?二人はどうなった?」 瀧海は解らないというようにそっと首を振る。かわって花珠が真珠に言い含めるように掠れた声で答える。 「私もたった今意識を取り戻したばかりだ……だがおそらくまだ生きている」 「本当ですか?」 「解らない……そう、感じるのだ。私がそう思いたいだけかもしれないが……」 「きっと生きています……必ず……」 「あぁ、お前と沙羅は信じられないくらい頑張ったよ。それは瀧海と石榴が 二人をさせてくれたからだろうが……私も自分があそこまでエナジーを使いながら生きながら得る事ができたなんて奇跡がいまだに信じられない」 とてつもなく疲れているように花珠は大きくため息をついてそっと瞳を閉じた。
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