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Now I'm here 54 |
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王宮内では、石榴の出産と黒曜が黙って出ていったことで大騒ぎだった。 実際、長い間黒曜が長い間実際の統治者だったのだから、当然過ぎるほど当然だった。 しかし花珠が「黒曜はちゃんと私に手紙を残している、案ずる事はない」 と言い放ったので表面上はそれ以上の騒ぎにはならなかった。 仕方ない事ととはいえ幼い皇子達に動揺が拡がり彼等は全く表に出なくなり、 その窓口として真珠が活躍したので真珠もとんでもなく忙しくなっていた。 「それにしても以外と冷たいのな、花珠って」 瀧海が不服そうに呟く。真珠も正直にいえば少しだけ同じ事を考えていたので どきっとした。 手紙も読んでいないのに、なぜ案ずる事がないのか? 本当に心配していないのか? もしもこれで黒曜との関係を終わりにしようと 思っているなら父上は冷た過ぎる。 でも、きっと違う。あの二人は離れていてもどこかで気持ちが通じているのかもしれない。 「近くにいても通じなかったものが、遠くにいってわかるものなのか?」 瀧海は真珠の心を見透かしたように真珠の耳許で囁いた。 「近すぎて見えない事もあるんじゃないかな?近くにいてうまくいかない時は 離れてみるのもいいのかも」 「俺はお前を離さない。たとえお前の事が見えなくなってもずっと俺から離れるな」 そういって瀧海は真珠の背中から腕をまわすとかぶさるように抱き締める。 「口に出しても解らない事がある。でも口に出さなくちゃ解らない事もある。 両親の事は僕自身もの問題でもあるんだ。もう少しここにいたいっていったら怒る?」 瀧海は深いため息をついた。 「本当はお前を離して置くのは心配で仕方ない。だが、お前は納得しないだろう?私が諦めるしかあるまい。だが、浮気なんかしたら、命はないと思えよ」 「瀧海こそ……」 真珠はそういって悪戯っぽい瞳で睨みながら口許だけは微笑んでいた。 実際これ以上真珠と現在『瑠璃国』となっているこの地に留まる事は許されない。 瀧海の国『春龍の滝』を治めなければ支障がでてくるところまできていた。 後ろ髪は引かれたが仕方がない。 瀧海は瑠璃国を離れる挨拶をしようと花珠の部屋を訪れると彼は少し疲れたような顔で 瀧海を迎え入れた。 「一度国に帰らねばなりません。真珠をよろしく」 「もちろんだとも。安心して出かけておいで、数週間後には石榴の子も孵化するだろう。 その時は瀧海の力を借りる事になる」 「黒曜殿のことはよろしいのですか?」 「それは言うな」 異常な程に動揺する花珠の姿に瀧海の心は締め付けられるように痛んだ。 彼も素直になれないタイプの男なのだ。 黙って一礼するとそのまま部屋を出た。彼の精一杯の虚勢が、少し前の自分の姿に重なって見え 冷たい男等と罵った自分を少しだけ後悔していた。 その間にも『災い』は急速に双児星に近付き、花珠の周りはより慌ただしくなっていった。 |