僕はここにいる

Now I'm here 39



 石榴の部屋からさほど遠くない廊下の突き当たりにその部屋はあった。 石榴が外界とのバリアを張っている間、沙羅が囚われている長老や使者達の戒めを解く。 石榴は後ろを振り返らぬまま脱出方法を的確に指示した。

 しかし彼等は石榴に関心を払わぬまま、慌てて部屋を出てゆく。石榴が彼のその風貌から彼等を拘束した 指導者だとは思いもしないのだろう。

 沙羅は複雑な思いで彼等の後ろ姿を見つめていたが、これ以上石榴に罪を重ねて欲しくない事は はっきりしていた。

 「何をなさっているのです!」

 その時強い叱責が石榴と沙羅に降り掛かった。

 「その宦官めと何を……」

 声の主は暗黒の洞窟の宰相、漠雨(ばくう)だった。石榴とは対照的ながっちりしたガタイの ぎょろりとした目の大きな中年男だ。

 この男が幼い頃から石榴を操り、多くの罪を犯させてきたのだと思ったとたん、沙羅の理性は崩壊しかけた。 指先から強い波動を送り漠雨を壁に激突させそのまま上に持ち上げようとする。 石榴が沙羅を制すると人形のように漠雨が転がり落ちる。

 「もう、気を失っている。こいつは放っておいて早く行かねば、真珠とルーパスが危ない」

 そう言うと即刻駆け出す石榴の後を追って沙羅もまた音もなく影のように駆けてゆく。

 「石榴様、お待ち下さい」

 「石榴様、いかがなされたのです」

 そう口々にいいながら止めようと襲い掛かる部下達を打ち払いつつ二人は真珠達の部屋に辿り着いた。 そこではすでに真珠とルーパスが果敢に石榴の部下達を相手に戦っていた。何時の間に奪ったのか 剣を巧みに捌きながら舞うように真珠が相手を打ち倒してゆく。沙羅はそれを戦いを中断して見愡れそうになる。

 「姫達も良く頑張ったな」

 石榴が子供に言い聞かすようにいうと真珠達は事情を察して笑みをこぼした。

 「真珠、お前竜を飼っていたろう。それを呼ぶんだ。洞窟のバリアはすでにはずしてあるし、 お前の声を私と沙羅とで増幅させよう」

 真珠はしっかりと頷くと透き通った声で竜を呼びつづけた。

 「華厳〜〜」

 その間、他の三人は真珠を庇いつつ、追ってくる石榴の部下達を落ちていた剣を使ってなぎ倒していた。

 どのくらい時が経ったのだろう。

 4人が追っ手を薙ぎ払いながら洞窟の外に出るとすでに日が暮れかかり辺りは燃えるように紅い雲に覆われていた。まもなく轟音の様な羽音が頭上から降り注ぐ。 気が付くと7.8匹の巨大な竜が空を覆い尽くしていた。 ゆっくりと旋回しながら降りてくる。追っ手の部下達は恐れを為して洞窟へ舞い戻ってゆく。

 真珠の竜「華厳」のあとにゆっくりと地上に降り立ったのは瀧海の竜『不動』だった。

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