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Now I'm here 38 |
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恐怖に引きつる石榴の髪をそっとかきあげるとそっとその胸に沙羅が凭れ掛かった。 「何をそんなに恐れておいでなのです?石榴様。貴方ほどの魔法を使える大魔導師は 他にはいらっしゃらないでしょう?」 「ふん、そんな事をいうと私が喜ぶとでも思っているのか?私もバカにされたものだ。花珠がいるではないか?」 「花珠様は貴方様も御存じのように今はエナジーを貯えておいでだ。誰も花珠様の巨大な 魔力を知ってるものはいない。私とあなたを除いては」 「もともと人の心を読むのは最も苦手としてるが、特にお前の考えてることは全く解らない」 沙羅はくすくすと笑いだした。 「何が可笑しい」 「そんなにこの私に手の内を見せてよいのですか?」 真顔に戻った沙羅の瞳には悲しみが満ちていた。 「なぜそんな哀しい顔をする」 「あなたを嫌いになりたい、あなたを憎くめたらどんなにすっきりできるか?」 「憎む対象にもならんか?」 石榴は小さなため息をつく。 「私も貴方様が見えません。ひとつだけはっきりしてる事がある。 貴方がやろうとしてることは、この世界を終局に向わせるだけだ」 ふんっと石榴は鼻で笑ってみせる。 「何もなくなるなんて空しいと思いませんか?そんなに死にたいなら 私があなたに付き合いましょう」 「ばかな事をいうな、何を考えている」 「貴方は自分のすべての力を使って終焉の元を取り除きたいと願っているのでしょう? それだけなら貴方と死ぬのは私だけでいいはずだ」 「なるほど…真珠や綺羅を助けたいのか?」 「いいえ……、どうせいつか訪れる死なら貴方と二人だけで迎えたい……」 「……っ……正気か?自分が何を言ってるか解っているのか?」 「はい……」 「確かに私は花珠と交信している、お互いの目的は180度違うがな」 「花珠さまはなんと……」 「私と打ち違えて死ぬと言っている……お前がはじめてだ、私を止めようともせず、一緒に死にたいなどと言うバカは……」 「私では役不足でしょうが……」 「そんなことは一言も言って無いだろう。本当にお前は本望か?」 「本望です。覚悟ならずっと前についている。貴方を憎めないと思った時からこうなる事を願っていました」 「こうなる事?死んでしまってお前の目的はどうやって達成されるのだ?」 「……貴方の子供が欲しい」 「お前は産めないだろう」 「そうですね」 「……私が産もうか?」 「……?!なんですって?」 「私は……何も言って無い。空耳だ」 「そうでしょうね。全く恥じ入ります。私は自分に都合のよい幻想が聞こえてくる耳をもっているらしい」 「私は悪魔になるように育てられたのだ。私には力があるようで全く自由にならない。それなのに罪だけは降り積もっていく」 「石榴さま……」 「お前が手伝ってくれるならまだ、長老達と紅の使者の命は助かるだろう。急ごう」 そういって部屋を出るなり小走りに駆ける石榴を追って沙羅もまた入り組んだ廊下を風のように足音もなく駆けていった。 |
