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Now I'm here 30 |
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重厚なドアの向こうには、眩しいばかりの光に満ちている。 どうやらガラスのような半透明なケージがあり、その向こうに人陰が見える。 いくつかのベッドと 簡単な家具。ケージのドアが開いたと思ったら真珠は 乱暴に押し込められた。 前につんのめりそうになりながら、かろうじて体勢を整えた真珠は「うっ」と思わず声をあげる。 大きなリクライニングのソファに寝かされていたのは、変わり果てたルーパスの姿だった。 全裸に近い格好で手足を投げ出すように横たわっていたが、その瞳には真珠の姿が映ってはいないようだ。 「ルーパス!」 思わず近くに寄って抱き起こすと何度か揺すぶって反応をみようとする。 「無駄です。真珠様」 背後で懐かしい声がする。振り向くとそこに沙羅がたっていた。 「沙羅……」 思わず、沙羅に抱きしめる。 「待って、真珠さま。多分、石榴はまだ僕らが知り合いだとは気が付いていない。 暫くは互いに知らない振りをしていた方がいい」 声を顰めて、沙羅がゆっくりと身体を離した。 「ルーパスは、どうしてこんな風なったんだろう」 「何度もあの石榴に蹂躙されたのです。初めはライラさまの前で、そしてライラさまをルーパス様の前で……。 あのお二人の嘆きは僕の心も壊してしまいそうでした。 二人の様子がおかしくなるとライラさまだけ、解放されたのです。何をしても反応なさらなくなり つまらないと……」 そこまで一気に話すと沙羅は口許を押さえて嗚咽を堪えた。 「石榴っていうのは、さっきの紅風の男か?」 「彼は祖先は紅人ですが、その血はもう殆ど受け継いでいないでしょう」 「まさか、あいつがその、紅の大地から流刑にされた王族の末裔なのか?」 「そのお話は御存じでしたか?彼の血の殆どは藍の大地のものです。 ですから彼には様々な魔法が使えます。御注意を……真珠様」 そこまで話すと、ドアから入ってくる人陰が見えた。 「楽しいおもちゃが増えた。今日はどれで遊ぼうか」 残酷な笑みを浮かべながらゆっくりと石榴が近付いてくる。長い黒髪と妖艶な切れ長な瞳が こんな残酷な事をする男だとは信じがたい。しかし、沙羅が嘘をつくはずもない。 石榴が真珠の方に向いかけると沙羅が石榴のすっと近くに寄って跪いた。 「石榴さま、私にも御寵愛を」 そのとたん、石榴の頬がうっすらと赤く染まったのを真珠は見逃さなかった。 「お前は泣きわめかないから、つまらない」 「石榴様……」 沙羅の声は今まで聞いた中で一番甘かった。 「仕方ない、では今から私の部屋に来い」 「え?」 沙羅の声は戸惑っている。今までこの部屋で行為が行なわれていたのか? それでも沙羅は気を取り直すように真珠に小さく会釈すると石榴の後をついて部屋を出た。 それにしても不思議なのは、あの華奢なイメージのある石榴はどうやってルーパスやライラや綺羅を 自分の思うように操っているのだろう? 瀧海が前にいっていた、恐ろしげな魔法を使うのかもしれない。 自分に何ができるのか解らないが、自らの身体を呈して真珠を守った沙羅の為にも 真珠はこの部屋に溢れる光をなんとかエナジーに換え、貯える事に熱中しはじめた。 |
