僕はここにいる

Now I'm here 29



 それはまるでコマ送りのようにはっきりとした軌跡を描きながら、あの冷たい切れ長の瞳をした紅人が近付いてくる。 この衝撃の中でなぜ彼だけがこんなにも冷静沈着なのか?どうして?

そこまで真珠は記憶があった。確かに……。

                 ★☆★

どのくらい眠っていたのだろう?

 こもった匂い、そして深い闇。ここはたしかに覚えがある場所。 だが、それがいつだったのか、どこだったのか真珠の朦朧とした記憶ははっきりとしない。 一応、床に絨毯のような物がひかれていたが、体中が痛み出す。

 そう、確かにここは あそこにそっくりだ。 卵を産み落とした洞窟。暗黒の氷山……そうだ、暗黒の氷山の入り口のひとつだという あの洞窟そっくりなのだ。あそこのような居住空間のような人口の細工はいっさいないが 4週間という期間たしかにあの場所で過ごしたのだ。間違えるはずがない。

 しかしなぜ?あの時はたしか、長老たちと、紅の指導者と掟について話し合う事になっていた。 そんなことになったのは、なぜか真珠とライラのホノグラムが紅の大地に広まっていて、 それが原因で瀧海があらぬ嫌疑をかけられていたわけで。つまりライラを記憶喪失にし、 ルーパスを拉致したと思われているのだ。それで自分が来たはずだ。しかしなぜ自分が来たのだ?

 真珠はふるふると頭を振って、さらに記憶を取り戻そうとするが、逆にさらに暗闇に引きずられるように 真珠の記憶は今一度、遠く儚くなっていった。

「起きれるか?」

 うっすらと眼をあけると少しずつ焦点が合い、その声の持ち主が長い黒髪の切れ長の瞳の美少年だと解った。

「ここは?」

「私の家の離れだ。まぁ、客人をもてなす場所だよ」

「ここは、紅の大地じゃないだろう?『暗黒の氷山』の入り口じゃないか」

「ふん、おまえは記憶力はいいが、判断力にかけるな」

「な……っ」

「他の者に口外したら、瀧海は紅との交渉をますます困難になるだろう。 それはお前の本意ではあるまい。よけいな口は聞かない事だ」

そういうと指をぱちんと鳴らして人を呼ぶ。

「連れていけ」

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