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Now I'm here 27 |
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「そうか」 瀧海は真珠の話を聞いて暫く考え込んでいるようだった。 「なるほど、暗黒の氷山にはそんな秘密があったのか……どうりで あそこに住む物は異形の者が多いと思ったよ」 一方、真珠も瀧海と話していてどうしてもある不思議な感覚に囚われて それについて尋ねたくて仕方がなかった。 「瀧海の話を聞いてると、僕が経験した時間と違う時間が流れていた感じがするんだけど。 まるでここ2.3日のことじゃないみたいに」 「2.3日だって?」 瀧海も驚いて顔が険しくなる。 「眠り姫じゃあるまいし、この数カ月の記憶が無くなっているわけではないだろうな?」 「数カ月?まさか……僕がライラ達と一緒にいたのは1日だけだよ。ここに帰ってからどのくらい 眠っていたかは知らないけれど。第一僕はここを出てから一度も食事をとって無いし」 二人は顔を見合わせた。 「お前は3ヶ月も行方不明だったのだよ。お陰で「翡翠」も、表情が豊かになったのだよ。」 「翡翠って皇子のことですか?なぜ、まるで解らない?ではライラ達は紅を出てから どのくらい経ったのだろう?紅を離れて数日のような事を言っていたが」 「多分、2.3年だろう」 「どういうこと?さっぱり解らない」 「これはお前だから話すのだが、極秘事項だから、お前の胸だけの留めておくのだ。 魔導師には真珠のように回復の白魔法を使うもの、攻撃の黒魔法を使う者が有名だが 中には蒼魔法とか紫魔法とかもあるらしい」 「僕も魔導師の家系だが、そんな話は聞いた事もない……」 「綺羅と沙羅がそのどちらかの家系らしい。魔法は男しか使えないから沙羅は宦官にされたのだ」 「ひどい……どんな魔法なの?」 「綺羅も沙羅も詳しいことは言わないが時間をとめるとか時間を戻すような事が可能なのが 紫魔法、そして人々の心を操ったり、混乱させるのが蒼魔法らしい」 「それは確かに人に知れると不味い魔法ですね」 「あぁ……だから、どう考えてもそんな危険な場所にお前をやるわけにいかない。 私が行こう」 「待って、あなたはこの国に必要な方だ。でも、僕はどこからも必要とされてない。 僕が行くよ。行きたいんだ」
「私がお前を必要としてないととでもいうのか?翡翠もお前を必要としているのだ、特に今は 最も必要な時だ。お前なら解るだろう?」 瀧海は真珠と真珠国の后『黒曜』の事を暗に臭わせた。 「なぜ、母上が僕を疎まれるのか解らない、少なくとも僕は翡翠を授かってこんなに 子供が愛おしいものだとは知らなかったから、ますます解らない」 そう自分でいいながら真珠は深く傷付いていた。実の母親に疎まれる自分の存在が儚く思える。 「母上にも何か心が傷つけられた事があるのだろう。多分お前をみるとそれを 思い出させるのかもしれない。真珠が悪いわけではない」 瀧海の優しい言葉に真珠は胸の奥から沸き上がってくる熱い感情を押さえる事が出来なかった。 瞳を涙で潤ませながら、瀧海の首にしがみついた。 瀧海は愛おしそうに真珠の背をそっと撫でる。 「やっぱり僕がいくよ。僕はこの国の事を何も知らない。僕はライラ達の事情を少しだけだが 知っている。僕が適任だよ」 「長老と同じような事をいう……」 瀧海の声は掠れて力無かった。 「真珠お前を行かせたく無い。このままどこにも……」 瀧海の腕に力がこもって真珠が呻いた。 「冷静になれ、瀧海。僕しか適任はいない……そうだろう?」 |
