僕はここにいる

Now I'm here 24



「華厳〜〜!!!」

 『萌黄野』に真珠の鈴のような声がこだまする。 季節はまさに新緑の萌黄色に溢れ、木漏れ陽がゆらぎ、溢れ出る泉のこぽこぽと いう音と小川のさらさら流れる音だけが真珠の声を吸い込んでゆく。 どのくらいの時がたったのであろう。

 あたりの風が騒ぎ華厳の羽の音が頭上を掠めた。しかし、そこにいたのは華厳だけではなかった。確かに見覚えのある一匹の巨大な龍。 こんなに見事な龍はそうはいない。そしてこの龍に乗りこなせる者も。

そう瀧海の龍だ。

 瀧海が蒼い顔で龍から降りてくるのが見えた。 何を思うのか顔は厳しく強張って微動だにしない。瀧海の顔をみただけで真珠は激流に飲み込まれ翻弄され続ける木の葉のような感情が沸き上がるの押さえる事ができなかった。瀧海がそこにいる。それ以上の何が今、真珠にとって必要だというのか?真珠はそのまま構わず駆け出した。

 驚いた顔の瀧海の胸の中に飛び込んでゆく。 瀧海はただ、戸惑った顔でおずおずと真珠の背中に手をまわす。 それでも抱き締めるのは躊躇っているようだった。落ち着かない様子で何度も拳を握ったり開いたりしている。

「瀧海……」

 真珠は潤んだ瞳で瀧海を見つめた。  

 その瞳に瀧海は我慢が出来なくなったというように乱暴に真珠の唇を蹂躙してから、真珠を横抱きに きつく抱き締めた。そのまま片膝を落としてもう一度確かめるように真珠を見つめるとやっと重い口をひらく。

「どれ程、心配したと思っている?黙って出ていってはだめだ」

 そういって幾度となく頬ずりをした。いつか感じた暖かいエナジーが真珠の身体を満たしていく。 真珠は瀧海の後頭部に腕をまわすと真珠の方からゆっくりと瞳を閉じて瀧海の唇に自らの唇を押し当てた。 瀧海はたまらないというように何度も真珠に口付けながら、真珠を確かめるように見つめ、また口付けというように飽きる事無く繰り返した。

「はやく、城に帰ろう、こんな真珠の姿を誰にもみせたくないからな」

 二人は名残惜しそうに離れた。瀧海の瞳は静かで何かを決心しているように見える。 真珠の胸に小さな不安が拡がりそうになるが、今は瀧海を信じていたい。そう思った。 真珠が華厳の近くに行こうとたちあがると瀧海がそっと制した。

「不動にお乗り、真珠。一緒にいたいし、それに……」

少し間があいて、瀧海は照れるように呟く。

「華厳に乗らない方がいい?」

真珠は不安そうに振り返る。それを見て瀧海は悪戯っぽい笑顔を向ける。

「華厳も近く卵を産むだろう。不動の子だよ」

 真珠はもう一度抱きついて瀧海の耳許で 「僕達と同じだね」と囁いた。

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