僕はここにいる

Now I'm here 22



 額どうしをつけて真珠とライラが無邪気な寝顔でいるところに、ちょうどけだるそうに起きたルーパスが 二人を見つけ立ち止まってじっと見つめている。

 少し、強張った顔をしたが、すぐに気を取り直したように、近付くと真珠の額に唇を寄せた。 するとその気配にライラが気がついてルーパスの顎を押さえる。

「ルーパス、お前も懲りないな」  

 ライラの怒った顔を見てルーパスが悪戯っぽく笑う。 真珠もやっと眼が覚めた。

「ほんとに真珠みたいな綺麗な子って、女も男も見た事がないな」

ルーパスはなおもうっとりした顔で真珠を見つめる。

「おおげさだよ、ルーパス僕は標準だと思うけど」

「標準なわけないよ。真珠より綺麗なやつなんてめったにいないだろう」

「そんな事無い。たとえば、さっき話した綺羅はとても綺麗だと思うけど。僕なんてどこにでもいる顔だよ。だから、瀧海も綺羅が気に入ったんだと思うし」

 そう自分でいいながら、真珠は少し傷付いていた。やっぱり綺羅みたいな綺麗な子の方が 男なら好きだよな……僕だってちょっと綺羅に夢中になりかけていたし。 まるでバックに星か薔薇でも背負っている雰囲気の綺羅を思い出し、真珠は少しだけ落ち込んでいた。

「真珠がどこにでもいる顔?いくらここが美人そろいだってそりゃないだろう」

 ありえないというように手を振りながらルーパスがすっとんきょうな声を出す。

「ね、藍の大地って顔のごつい奴とかいないの?」

 真珠はしばらく考えていたが、ふとひとりだけそのごつい奴を思い出した。

「雪野……っていう瀧海の家来がちょっとそんな感じかも」

その名前を聞いたとたん、ルーパスとライラが顔を見合わせ同時に叫ぶ。

「ネーヴィ−だ」

「知ってるの?」

「知ってるも何も有名人なんだ。冒険家かな」

ライラが親切に説明する

「彼は紅の大地では『ネーヴィ−』って『雪原』っていう意味なんだ。しかも万年雪の。『雪野』なんてらしくない名前に翻訳しちゃって、ネーヴィ−に似合う訳ないよな」

 ルーパスの怒ったような台詞にライラはさも可笑しそうに笑った。 そこでふと気がついて真珠は小首を傾げて尋ねる。

「あれ?藍の大地と紅の大地は同じ言葉を話してるんじゃないの?」

「実は違う。こんなに自由に僕らが真珠とはなせるのは僕らが首につけている首飾りが自動翻訳器のおかげなんだ」

「じゃあ、雪野は、どうして紅から藍の大地に来たの?なぜ、瀧海のところにいるの?」

 真珠は次々と沸き上がる疑問をルーパスにぶつけてみた。

「僕らもまだ、子供扱いだから、詳しくは知らないけれど、暗黒のなんとかっていうところに 紅の大地の受刑者を島流しみたいにしてるらしいんだ。 それは、昔から『紅と藍の大地にある掟』に背くものらしいんだけど、背かなくたってそれが、こんな平和そうで美人の多いところなら誰でもまずいって思うだろ?」

「じゃあ、『暗黒の氷山』の化け物って紅の人たちだったんだね」

「おい、おい、化け物はないだろうよ、同じ人間だぜ?」

 ルーパスが黙っていられなくなって思わず口を挟んだ。

「ルーパス、姿もごついが、なにより凶悪犯だぞ。藍の大地の人々にしたら化け物だろう」

「どうしてそんな人が藍の大地に来たんですか?」

「どうやら、その極悪犯は大国の王子だったんだ。そのまま「藍の大地」が気に入って住み着いて街の娘を攫って来て強姦したとかいう感じらしい。彼にしたらハーレムだろうから」

「ひどくないですか?それ」

 真珠は呆れたようにライラに詰め寄った。

「たしかに酷い。詳しくは解らないが僕らより三世代くらい前の話だ、だがこれ以上彼等が悪さをしないようにネーヴィ−……ここでいう雪野達が調査隊として派遣されたんだ」

「どうして藍の大地の長老達と連絡をとるとかしなかったんでしょう?」

「う〜〜ん。僕らも大人達の考えてる事は良く解らないが、掟が関係してるんだろう」

 そんなすべてを瀧海は知っているのだろうか?こんなところでゆっくりしている時間はない。真珠はすぐに帰って瀧海にこの話をしなければと焦った。この際、自分の小さな嫉妬は棚にあげなければならない。

 暫く話しあってから3人が幼い知恵を絞って、まず真珠国の近くに真珠を降ろし、華厳に乗って『春龍の滝』に帰るのが一番安全ということになった。

 まずはどこか真珠国の近くで船が目立たないで着陸できるところを捜さなければならない。

 ライラは地図を船の壁に写し出すと真珠が一番適当だと思われる森を指差した。 船は森に向ってゆっくりと加速した。

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