昨夜の瀧海から流れてきたエナジーはなんと甘美で暖かかったのだろう。
思い出すだけで真珠は心が満たされるのを感じずにいられない。
『もしかしたら、瀧海は僕が嫌いではないらしい。そして僕も瀧海の事が気に掛かっている』
快感を解放して気を失った瀧海を自分の隣で見つけた時なんともいえない愛しい気持ちになった。
そして今朝目が醒めた時に見た無防備な瀧海は、やはり同世代の少年のイメージが残っていた。いつもは無理をして大人ぶっているのかもしれない。そう思える余裕が真珠には出来上がったような気がする。
久しぶりに感じる幸せの余韻に浸りながら、ふと我にかえる。
「そうだ、一応、僕も親なんだから子供の世話をしなくちゃいけない」
皇子の部屋に行こうと真珠が部屋の扉を開けると、遥か向こうの廊下に瀧海の姿が見えた。
照れながら駆け寄ろうとして、真珠は石のように動けなくなる。
綺羅の部屋の前で瀧海と綺羅がキスを交わしていた。
それは、挨拶のような軽いものではなく、まさに愛しあう二人そのもので真珠が昨夜セックスのついでに
受けたキスとは全く別のような感じだった。
『女がだめなんて……うそじゃないか……』
真珠は慌てて部屋に戻って後ろ手にドアを閉めた。
自分は、一度だってあんな場所であんな感じのキスを受けた事など無かった。
いつも奪われるような激情にかられた激しいもので性欲に附随するキスのような気がする。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせる。
瀧海は僕のことを嫌いなわけじゃない、もう、僕が完全な男になってしまったから、子供を作るそのために為に綺羅を....。
そこまで考えて真珠は自分の頬に暖かいものが落ちていくのを感じていた。
昨日の熱い夜はなんだったのだろう。
無意識に魔法を解放してしまう程のあの快感をもたらせてくれた瀧海のエナジーが
偽物だとは思えない。
それなのになぜ、心が痛いのだろう。
会いたい、会って確かめたい。本当の瀧海の気持ちを......。
真珠はそっと部屋を後にした。先ずは皇子の部屋に向う。
皇子は色々な人々にかしずかれ世話を受けていた。自分の手は必要なさそうだ。
「真珠様、こちらに」
侍女達に案内されて、皇子の顔を覗き込む。瀧海の瞳と似ているようだ。
真珠の心がふと暖かくなる。
そしてこの子も白魔法が使えるようだと気がついた。
こんなに小さいながら、必死に自分の方にエナジーのアンテナを向けコミュニケートしようと
している。真珠の方からも皇子に優しいエナジーを少しだけ送ってみた。
必死にそれに反応しようとしている姿が愛おしい。
「あぁ」
「まぁ」
侍女達の反応で真珠は自分と皇子の頭上に金色の軌跡がリボンのように取り巻いてるのに
はじめて気がついた。
それは昨日のように虹色に輝くダイヤモンドダストのようなものと一緒にくるくると廻っている。
「綺麗....」
「凄い.....」
多くの侍女達のため息と共にそれが少しずつ薄まっていき、床に降り注いだ。
皇子は満足したように小さな寝息をたてている。
真珠はやっと安心してその場を後にした。
|