僕はここにいる 14

Now I'm here 14



「皇子が起きて泣いたら抱いてもいいぞ」
瀧海が悪戯っぽく微笑む。
(瀧海もこんな顔をできるんだ)
真珠は自分の胸の奥がちりちりと焼けるように痛むのを感じた。
(僕が男であり女でもあったから子供を作るのに都合がよかっただけだと言うのに、いったい 僕は何を瀧海に期待してるのだろう)
どこから来る感情なのか解らないが、真珠にとっては持て余す気持ちだ。
喉の奥に何か詰まったようなそんな苦しさ。
そんな気持ちを振払ってすやすやと眠る皇子のウズラの卵のような小さな拳にもう一度そっと手を寄せた。
それに気が付いた瀧海が真珠の横顔を見て声をかける
「真珠、綺麗にしてもらったな。でも化粧をしなくてもお前は充分綺麗だよ。
皇子を抱かせてやるから化粧は落としておいで」
真珠の顔が羞恥と怒りのあまり真っ赤になった
(僕が、好きで化粧なんてしてると思っているのか)
「どうした?」
(こんな屈辱は初めてだ。僕は女じゃない。それなのにこんな格好までさせられて、どうしてこんな屈辱を受けなければならないのか)
「何を拗ねているのだ?」
「子供なんか欲しくない」
思ってもいない言葉が口から出てくる。
「子供なんか欲しいものか」
そう叫ぶと引き止める侍女達を振払い部屋を飛び出した。
侍女達が慌てて追い掛けようとする。
そこに瀧海の罵声がとんだ。
「放っておけ!!!もう、かまうな」
皇子はその声に驚いて火が付いたように泣き出した。

皇子を抱き上げようとした侍女を制して他の者達をすべて部屋から出した。
そして殆ど誰にも聞こえない様な声で一人ごちた。
「俺の子供など欲しくなかったと言う訳か」
沙羅から卵を引き離した時に『僕の卵だ』と泣いていたと聞いたのは何だったのだろう。
「綺羅か……それとも沙羅か……」
そう小さく呟くと、瀧海の声で起きて泣き出した皇子をそっと抱き上げる
「よしよし、大きな声を出して悪かったな……お前を産んでくれた母親に抱かせてやりたかっただけなのだよ。もし、お前も母親に愛されないのだとしたら……それは私だけの罪だ、許しておくれ……」
瀧海は潤んだ瞳で遠くを見つめ皇子にそっと頬を寄せてやさしく抱き締めた

BACK TOP NEXT