真珠が部屋に戻って四半時も経っただろうか、自分の不安定な感情を持て余して真珠は数度目のため息を付いていた時
「真珠様、真珠様 皇子さま、御生誕です。おめでとうございます」
侍女が息を切らせて部屋に入るなりそう報告した。
「すぐに瀧海さまの元へおいでになるようにとの事です」
侍女は真珠の服を着替えさせながらせかす。
「真珠さまはお名前の通りに真珠がお似合いでございます」
(なぜ、瀧海に会いにいくために化粧をしたり装身具を身に付けなければいけないのか)
真珠は無性に苛立たしかったが、ふとドアの蔭に綺羅の姿を見つけて呼び止める。
「綺羅様、よかったらお入りになりませんか?」
部屋の片隅に置かれた猫足の小さなテーブルには瀧海から贈られた色とりどりのチョコレートや飴や砂糖菓子が置かれている。
「いかがですか?」
真珠が勧めると綺羅は凝った装飾の小さな砂糖菓子を嬉しそうに口に入れた。
「可愛くて甘い。」
「お気に召したならいくつでもお持ち下さい。甘いものはあまり口にしないのです」
「でもこれは、瀧海さまから、真珠様に贈られた物でございましょう?」
綺羅が上目使いに真珠の表情を盗み見た。
その間にも侍女達が真珠を化粧しながら髪に装身具を差し込み結い上げる。
「いつも侍女達に好きなだけ持っていってもらっているのだもの、同じですよ。
よかったら、僕が直接お部屋にお持ちしましょうか?」
化粧をした真珠は輝くばかりの美しさだった。
「ありがとうございます。お言葉に甘えて後でわたくしの部屋でお待ちしていますわ。来ていただけますの?」 真珠が頷くと安心したように綺羅は部屋を後にする。
部屋を出ていった綺羅の姿を真珠はじっと見つめてまた、ため息をついた。
「綺羅様は本当に綺麗だ」
「真珠様の方がもっと美しゅうございますわ」 侍女達が顔を見合わせて微笑んだ。
さぁと侍女達に急かされて真珠は瀧海の居室に出向いた。
そこには、クリスタルの揺りかごが置かれ、細かな羽毛が透けて見えるほどの薄い絹で覆われた産着に包まれたそれはそれは美しい赤ん坊が静かに横たわっていた。
真珠が手を伸ばそうとすると「待て、今やっと寝かし付けたのだ」と瀧海が声をかけた。
「どうだ、可愛いだろう」
そう、微笑む瀧海の顔は真珠が始めてみる穏やかな顔だった。
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