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女の子達の装いが春らしくなるにつれ、街の色がパステルカラーに染まる。 そして舞い上がる花吹雪。 通り過ぎる女の子達の視線も、ホスト時代からいやというほど浴びてきたのに、今の俺には、とっても眩しい。 俺の横を誇らしげに歩くいくつになっても少年のような男に視線がすべて集められているからだ。 男性としてはかなり低めの身長と、いまだに白い肌。伊達メガネに隠された切れ長の大きな瞳は、濃い睫毛で彩られている。 美人や美男子を見慣れた俺でも、ついぞこれほどまで、綺麗な顔立ちの男にお目にかかった事はない。 もしも彼の身長さえ、170cmを越えれば間違いなく女の子にモテるだろう。 しかもこの顔立ちだから、いまだにセクハラに近い事を、彼が所属する事業者クラブですら、されたことあったらしいと恐神が教えてくれた。 どこか頼り無さげに見える彼を、なんとかしようなんて最低の男が多いのだ。 だけど、城は俺にそんな事があったことすらおくびにも出さず、優しくしてくれる。 今日も散りゆく桜を見ようと、短い休憩時間をわざわざ俺の為に割いてくれる。 だけどな……嬉しいんだか、悲しいんだか。 皆の視線はどこか俺をうらやましげに見て、城に同情的なんだよ。 恐神以外の側近は、俺に「城さまをあまり、振り回されないように」なんて思っていると恐神が教えてくれる。 どうやら、仕事一筋だった恐神が、最近なにかと長期の休暇をとるものだから、俺が結局矢面に立たされる事になるのだ。 「志月、寒くない?」 花冷えの頃とはいえ、俺だってそこそこ筋肉のついた普通の男だ。それなのに、城が差し出してしているのは、彼が着ていた春物のコートだった。 「寒くないよ。俺も薄手だけど、一応ジャケット着てるし」 車から降りて少しだけ歩いてるだけで、そんなにすぐ寒くなったりしないし、第一、俺と城じゃ身長も違う。 「そこの桜の見える公園のレストランの2階を借り切ってるから」 借り切らなくていい!とはとても言えない。 二人だけになると城はもう、周りがさっぱり見えなくなって、何かとちょっかいを出してくるから。 レストランの重いドアを開けると、待ち構えていたように、ソムリエとギャルソンがやってくる。 城が何かを注文するたび、俺にいいのかと確認するように見つめてくるのに閉口する。 「何を注文する?」 「なんでもいい、城に任せる」 従業員達の好奇の眼が俺には痛い。少しは、目立つ人間なんだと自覚しろよ。しかも、皆が皆城に注目しているじゃないか。きっと俺は城に纏わりつくヤクザな男とでも思われてるんだろう。 「じゃあ、このワイン頼んでいい?」 はぁ? 俺は思わずあんぐりと口を開けた。 どうやら城はここの従業員達が俺達の事を知らないのをいいことに、この状況を楽しんで遊んでいるのだ。 「いいっていうか……」 「ふふふ、嬉しいな」 自分で注文して嬉しいのか?嬉しいのかよ。 「ねぇ、桜の下でお料理が食べたいな」 城、小首を傾げる様が似合ってる、似合っていて怖いぞ、その仕種。 従業員が、さっそく用意してくれた大きな桜の木の下で、綺麗にテーブルセッティングされたテーブルに俺達は男二人で座っている。 きっとこれをみて、誰もが俺を城に無体を働く男だと思っているんだろう。 だけど、この愛らしさから想像できない、こいつの夜の無法っぷりを俺以外の誰も知らない。 きっと今夜も抱かせてと言ったら、城は嫌とはいわないだろう。だけど……。 明日の太陽は黄色いかもしれない。
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