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ラブリーボーイズの園・2 参加作品(ぺんぎん) |
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夕日が落ちて夜の帳が降りる僅かな間、夕焼けから、濃い群青色の間に虹の様に色の グラデーションが拡がっていた。 そこに冴え冴えと浮かぶ三日月。 ひとりの少年が暫く空を見て佇んでいる。 「綺麗だな」 「さぁ、早く百春くん、みんなに挨拶しなくちゃね」 そういって手を引くのは今日から百春のお母さんのかわりをつとめてくれる優香さんだった。 突然の交通事故でいきなり両親を無くして10ヶ月。14才の百春が親戚をたらい回しにされて やっと決まった落ち着き先だった。 今までの親戚は他の親戚の手前もあるのか、食べ物はたっぷりと食べさせてくれた。 殆どが愛情のこもらない出前やジャンクフードだったが、百春は喜んで残さず食べた。 それが、どういう結果をもたらすかも知らずに。 門から玄関まで150m程ある大きな敷地に豪奢な作りの屋敷が見えてくる。 この屋敷はまさに屋敷と呼ぶに相応しい重厚な歴史を感じさせる日本建築だった。 「ただいま帰りました」 優香さんは、この家では2度目の奥さんだ。だから百春より年上の子供(百春にとっては従兄弟)がいるが、まだ29才の若さできれいで優しい感じの人だ。百春はすっかり優香さんが気に入った。 しかし、そんな優香さんの声にこの家の者は誰も反応しない。 「さぁ、遠慮せず、入って。邦彦さんは遅いのよ。前にも説明したかしら?邦彦さんは百クンの伯父さんにあたる人なの」 長い廊下を抜けると、12帖程の部屋に案内された。真新しい机やベッドや本棚がすべて取り付けられている。今までの親戚からみると格段に良い扱いに百春はほっとする。 「お腹がすいたでしょ?御夕飯は揃えてあるから、食堂にいらっしゃい。」 天井の高い食堂に入るなり、百春は一瞬動きが止まった。 そこに等身大の西洋人形が置いてあったからだ。 「まさか、こいつが僕の従兄弟なの?」 人形がいきなり口を聞く。華奢な身体の上に乗ったとても小さな頭は信じられないというようにゆっくりと左右に動いた。 「なんだ、このみっともないデブ。変な眼鏡までかけて、肌はぶつぶつだらけで気持ち悪い」 小さな桃色の唇からとてつもなく辛辣な言葉が飛び出す。 しかし、百春はもう、こんな風にいわれるのには慣れっこになっていてたいして傷付きもしない。 照明も良くない中で本を読まされるので視力は極度に落ち、不摂生な生活と様々なストレスが 百春の肌と食欲に酷い圧力をかけていた。 『それにしても、色が白くて顔の小さな男の人だなぁ。だから人形みたいに見えたんだ』などと百春は呑気に見つめている。 「座ったら?そして早く食べて部屋にいっちゃえば?」 美少年は百春をぎろりと大きな眼で睨み付けた。でもそんな顔も冴え冴えとした月のように冷たく整っていた。 「縫殿くん百春くんよ。ひゃくのはるって書くの。百くん縫殿くんはね。裁縫のほうの字に 殿って書いて『ぬい』って読むのよ。二人とも仲良くしてね」 優香さんの紹介を縫殿は完全に無視した。その上縫殿は百春をも無視するように彼方の方を向いて小さな口を上品に動かしている。 それでもやっぱり百春はすごく嬉しかった。優しい優香さんと綺麗な縫殿くん。楽しくなりそうな予感。 その夜両親が死んでから初めてストレスを感じないでゆっくりと自分の部屋で眠りにつく事ができた。 |