月のつめ痕 (7)

ラブリーボーイズの園・2 参加作品(ぺんぎん)



 縫殿は冷静になろうと独り自分の部屋の隅で最悪の選択を選び続けた自分に向き合っていた。

  ※ ※ ※

 いったいいつから、僕はこんなにモモに夢中になっていたのだろう。 出会った頃は最悪だった。 何が最悪かって、僕の態度だ。

 僕の大好きなお父さんはもっと大好きな僕のお母さんと離婚してしまった。たしかにお母さんが他の男の人と結婚したから、それは仕方なかったのかもしれない。 でもその直後、お父さんがすぐに他の女性と再婚して、僕は完全に混乱しいじけてしまった。

 僕は離婚するまで何も知らされていなかった。みんなに愛されてると思っていたのに、結局誰も僕を本当に必要としてはくれていなかった。そう思ったから。

 それでも幸運な事にお父さんの再婚相手の優香さんは本当に良い人だった。 僕がどんなに反抗的でも優しくて……甘えん坊の僕は結局、優香さんの虜になるのにそう時間はかからなかった。

 もう、優香さんに懐いても良いかな……そう、決心した時にタイミング悪くやってきたのがモモだった。 モモは確かに特別綺麗な子じゃなかった。 親戚をたらい回しにされて疲れていたのだろう。確かにぽちゃっとして肌は荒れ果てていたが、それでもモモの愛くるしい表情は眼鏡の奥からでも良くわかった。

 なんて愛らしい表情をする子だろう?こんな表情の出来る子もみんなに可愛がられて育ったのだろう? そして、今度はやっと仲良くなりかけた優香さんもこの愛くるしい中学生の従兄弟のものになるのかと 思うと意地悪な気持ちが芽生えてきて、気がついたら酷くモモを罵倒してしまった。それなのに、優香さんは僕を責めたりしなかった。

 その上モモときたら、そんな僕なんかに簡単に穢される子ではなかった。 僕をいつも愛くるしい熱のこもった瞳で訴えるように見つめてくる。 僕はあの出合いが穴に入って出てきたくなくなる程心底恥ずかしかった。

 できるものならやり直したかったが、そんな勇気はなくて、いつもモモをみると ついどうしていいのか解らなくて逆に避けてしまう。

 そんな時僕は思い出した。僕の唯一の親友幼馴染みの潮見は僕と好みが良く似てる奴だった事。 彼が僕をこの地獄から救ってくれるのではないかと最後の期待して家に呼んだ。本当に追い詰められていたから。 本音を言えばたしかに僕の心の中には多少痩せて最近ますます綺麗になったモモを自慢したいという気持ちはあった。 だけど、これほど酷い結末になるなんて……。

 潮見がモモの眼鏡を取った時、僕は潮見が恋に落ちたのを信じられない気持ちで見つめていた。 皆の前で眼鏡を外されてきょとんとした、まるで子犬のようなモモ。 僕の大切なモモをアイツにだけは見せてはいけなかったのに。なんて愚かなぼく。

 モモと潮見がこっそりとデートをしてるのを観た時、半分僕の心はもう壊れかけていた。 なぜか僕はいつも最悪の結果を選んでしまう。

 そう……いつも、もっとも欲しいものと大切なものを一緒になくしてしまう。

 考えてみれば僕が今日、本能にまかせてモモにとった行動はそのなかでも最も最悪だ。 とりかえしなんかつかない。もう、どうしようもない……

 だって今の僕には相談をする友達すら親すらいないのだから。

        ※ ※ ※

 どれ程縫殿が考えたところで沸き上がるのは苦い後悔と苦しい想いと共に 流れ落ちる泪だけだった。 

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