初体験『月のつめ痕』番外

ラブリーボーイズ2『月のつめ痕』を先にお読み下さい



 月の綺麗な夜だった。

 本当は恋人と一緒に週末を過ごすはずだったのだが、最近付き合いの悪い 親友を恋人に振られた潮見が会いたがるので仕方なく招待する。

 そうでなければ、この親友という名の悪友潮見は冗談の振りをして何を学校で 言い出すか分ったものではないのだ。

 3人で楽しく庭でテニスなどをして夕食を食べ、たまったメールに返事をしてふと気が付くと愛おしい恋人がいない。 そのうえ遊びに来ていたはずの親友潮見の姿が見当たらない。

 縫殿はなにか嫌な予感がした。嫌な予感ほどなぜか良く当るのだ。心臓の鳴り響く音が辺りにまで聞こえそうだ。

 「モモ、百春?どこだ?」

 普段使われていないはずの部屋のドアの隙間から僅かに明かりが洩れている。

 「あ……」

 そこからため息のような微かな声が洩れてくるのを縫殿は聞き逃さなかった。

 「だめ……い、痛い」

 「落ち着いて、もう一度入れ直してみよ?」

 「あ、あ、やっぱりだめ……いたいもん」

 「その手をどけないと入らないよ」

 「いやだ、やめて」

 「はじめてじゃないだろう?何を怖がっているの?」

 「ね、大きな声出さないで、もし、縫殿に知られたら……」

 縫殿はその台詞で理性が完全に崩壊した。

 バタン!!!

 思いきり良く扉をあける。そこには百春と潮見が庇いあうようにして寄り添い 酷く驚いた顔で縫殿を見つめている。

 「縫殿、あの……黙っていてごめんなさい。でも、僕……」

 百春の瞳はすでに真っ赤に腫れ泪で潤んでいる。

 そういって潮見が自分の後ろにモモを庇う。それがさらに縫殿の怒りをかった。

 「ふざけるな!」

 「まて、お前も悪いんだぞ、モモの気持ちも考えてやれ」

 「聞くか!」

 一発なぐってやろうと縫殿が腕を振り上げる。 百春は捨て身の状態で思いきり縫殿の両足にしがみついた。

 「やめて、潮見さんに乱暴しないで。僕が頼んだの。だから……」

 モモまで潮見を庇うのか?じゃあ俺は、俺の立場はどうなるんだ。

 「こんなに泣くほど潮見が好きなのか?」

 縫殿の顔は真っ青だった。 それをきょとんとした顔で百春は縫殿を見上げた。 それから潮見と顔を見合わすと大声で笑い出す。

 「何が可笑しい!!!!」

 縫殿は今度は顔を真っ赤にして怒りだした。 百春はくくくくっと小さく笑って縫殿の足に擦り寄った。

 「やだなぁ〜縫殿のエッチ!」

 「何がぁ?」縫殿はくわっと牙を剥くように口を開けた。

 「何がって縫殿こそ何を考えてるのさ。まさか、僕と潮見さんが変な事をしてると誤解なんかしてないよねぇ」

 百春の口調はいつもの縫殿のイジワルな口調にそっくりだ。

 「え……え……」

 今度は縫殿がおどおどする番だった。

 「眼鏡だとスポーツするのに不便だから、コンタクトにしたいんだって。でも縫殿は反対なんだろ? モモの素顔を独り占めしたいんだろうが」

 「こ、コンタクト……」

 完全に縫殿は脱力している。

 「普通、するか?そんな誤解……」潮見は腕を組んでわざと怖い顔を作る。

 「これはお仕置き決定だね」

 百春は嬉しそうにいう。

 「ふふふ、どんなお仕置きをしてやるか楽しみだな、な?モモ」

 百春と潮見は後ずさる縫殿を少しずつ追い詰めながら楽しそうに瞳をかわした。


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