曇りガラスの向こうに降る雪は

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 どんなに湊が抵抗しても力の差は歴然として最後の小さな下着も取り払われた。 水上はゆっくり自分のネクタイを解くと湊の両手首を縛り上げ、真鍮のベッドの隅に縛り付ける。 湊は恐怖のあまり全身が震え大粒の涙が頬を伝ってすべりおちてゆく。

「泣くな。いい子でいれば乱暴なんてしない」

 震える湊をぐっと抱き締めると髪にそっと口付けた。そしてそれでも嗚咽の止まらない湊の唇をそっと自分の唇で塞ぐと、そっと背中を撫で続けた。

 それから随分、時間がたったような気がした。 少し、呼吸が戻ってくると、水上は唇をそっと離して湊の顔を覗き込む。

「落ち着いたか?」

湊は不安そうに瞳を左右に泳がせた。

「普通の生活をしてるあなたと、僕にもう、接点はない。もし少しでもあの時の事を悪かったと 思ってくれるならこのネクタイを外して」

「外したら、俺の腕をすり抜けて二度と会う事はないんだろう?」

湊の頭にそっと顎をのせて水上が囁いた。

「あなたは僕を蹂躙しなくても充分幸せな生活を送ってるじゃないか。お願いだから 僕をそっとしておいてほしい」

 湊の瞳からまた大粒の涙が流れ落ちる。 水上は苦しいほどにぎゅうと湊を抱き締めた。

「会えなくなってからどれほど俺が後悔したかお前にはわかるまい。ずっと捜し続けていたのだ。 お前程執着した者に出会った事はない。もう、お前の事は忘れたと思っていたのに」

「僕をどうするの?このまま黙って身体を許したら帰してくれる?」

好きなだけ蹂躙すればいい。滅茶苦茶にされた方が、水上を憎む事ができる。その方がずっとよかった。

「帰りたいのか?身体を売る生活に?」

不愉快そうに吐き棄てた水上の言葉に、湊は期待しそうな心を押し込めた。

「BOYじゃないんだから、身体を売るばかりじゃないよ。時々は贔屓の客の顔も立てるけど、 安売りしたことなんかない」

「お前の身体に誰かが触れるのが耐えられないんだ」

「奥さんもいて、愛人もいて毛色の変わったニュ−ハーフもいて……水上の性生活は、充実してるねぇ。 でも僕は猫じゃない。このまま何日も監禁しようとでも思ってないよね?」

「そうだ、結婚って俺の義務だと思っていたけど、このままお前がここにいるなら やめるよ。本当だ」

この男は望めばどんなものでも自由になると思っているのだ。自分の手で壊したおもちゃでさえ、捨てるのが惜しいのか?

「僕がそれを望むと思ってるの?」

「お前の此処は望んでるね」

「身体を合わせればじじいにだって欲情するのが僕らなのさ。勘違いしないでよ」

身を捩りながら離れようとする湊をぐっと引き寄せるとさも嬉しそうに 水上は声をあげて笑った。

「何が可笑しいのさ」

「お前となら、本気で結婚したい」

「バカバカしくて聞いてられないね。」

呆れと怒りを含んだ瞳で湊が睨み付ける。

「結婚って監禁したい程好きな相手とするものだったんだな。お前が俺の帰りだけを待っていてくれて 俺の為に飯なんか作ってくれたら最高だね」

「男同士で結婚できるわけないじゃないか。そんな夢みたいな事いうなんて冗談だって僕達みたいな立場の人間にはすごく不愉快だ」

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