曇りガラスの向こうに降る雪は2

123456HITSキリリク8(コンコンさまリクエスト)


 浩輔から行き先を紙に書いてもらい、タクシーの運転手に見せるだけでいいからと 何度も確認を受ける。それでも仕事に行く浩輔を湊は複雑な思いで見つめていた。

 じゃまはしないから一緒に行きたい。一人でタクシーなんて不安だ。 チップはいくらあげれば、よかった?2割〜3割くらい? もし、他の事を聞かれたら?そう、叫びたかった。

 でも、湊がそんな事を言ったら、浩輔は仕事を休んだり、遅刻してでも浩輔の面倒をみてくれるかもしれない。それじゃあ、ただのお荷物だ。決心して湊もホテルに向うことにした。

 ちょうどエントランスホールで守衛のおじさんに何か声をかけられて、何も悪い事をしてないのにびっくっとしてしまう。 にっこりと微笑み返したが実は湊は何を言われたのかさっぱり、わからない。自己嫌悪……辿り着くのかホテルに?

 高鳴る心臓をなんとか抑えようとしながら、取りあえず、外に出た。

 後ろから肩を叩かれたのでまた、びくっとして振り返るとそこにはロバートと東洋系の顔だちの少女がいた。

 「コンニチハ」

 とりあえず、辿々しい挨拶をすると、日本語で返事が返ってきたので肩からどっと力が抜ける。よかった……。

 「私、ケーコ・ルイスといいます。ロバートに日本語を 教えてるんだけど、あなたが困ってるみたいだから、声をかけてと言われたんです。何かお困りですか?」

 「僕、相田湊です。日本語でほっとしたよ。実はホテルに行きたいんだけど、タクシーとか不安で……。地下鉄も良く解らないし」

 「そう、よかったら時間もあるしロバートの日本語の勉強にもなるから、私達も御一緒しましょうか?」

 「え?いいんですか?」

 思わず顔が綻ぶ。

 湊は少しだけ浩輔の言った事を思い出した。しかし頭を振る。 別にロバートを部屋に入れる訳ではないのだ。タクシーに乗るだけだし、女の子も一緒だ。 なにより湊は英語が不安だったから、まさに渡りに船である。断る方が不自然だよね?と湊は自分を納得させて一緒にタクシーに乗り込んだ。

 しかし乗って暫くしてから、湊はホテルの名前をケーコに告げてない事を思い出す。 しかし、タクシーはどんどん遠くへ走っているようだ。

 「あの、僕のホテル……」

 「郊外にロバートの別宅があるの、そこで貴方には英語、ロバートには日本語を教えてあげる。 浩輔はまだ、帰らないでしょう?夜には必ず送り届けるから」

 湊はしだいに不安になる。浩輔に何も言わず、ロバートの家にいったら怒られるかもしれない。

 「英語はこの次でいいです。ホテルに……あの……」

 ケーコは冷たい顔で言った。

 「もう、無理」

 真っ青になった湊を見ながら、ケーコとロバートは顔を寄せてひそひそ話しをしている。

 その内容が解らないながらも湊は自分の事を言っているのだと、判断できた。

 急に恐怖感が襲ってくる。なぜ、浩輔に注意されていたのに、こんな事になってしまうのか。 門から屋敷まで随分長い距離のような気もしたが、湊は混乱していてよくわからなかった。

 「帰る……帰りたい」

 小さな声で呟いたが、二人はにやにやするばかりで、湊は余計に 恐怖に襲われた。

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