曇りガラスの向こうに降る雪は2

123456HITSキリリク3



 「何でも向こうで買ってやるから」

 「帰ろうと思えば何時でも帰れるんだよ」

 浩輔はそう何度もいって強引に湊をNYに連れて行く事に成功した。 しかし、飛行機に搭乗してから機嫌が悪かったのは、浩輔の方だった。

 「浩輔……」

 「……」

 何を考えているのか湊の方を見ようともしない。

 「何か気に触る事したかな?」

 暫く時間が立っても眉間に皺を寄せたまま無言の浩輔を横目で見ながら湊が呟く。

 「……やっぱりアメリカは不安だ。浩輔に見放されたら俺……」

 蚊のなくような声で湊が俯くので浩輔はやっと湊の方をみた。

 「自己嫌悪していただけだよ。湊が自分で来るっていうまで我慢しようと思ったのに」

 「行くって決めたのは、僕だよ。浩輔が無理に連れて来た訳じゃないじゃないか、それより」

 そういってくすくす笑う湊に浩輔はますます不機嫌な顔になっていく。

 「それよりなんだよ」

 「浩輔がそんな事を気にするタイプだなんて思わなかった」

 「うるさいよ、お前がさっさと来ないからいけないんだ」

 「そういう事にしておこうか」

 どうも湊の方が余裕がありそうだ。とはいえ湊は英語に不安がいっぱい。一方の浩輔も みなとの貞操に不安がいっぱいだった。

 連れて来たら連れてきたで気になって仕事が手につかないかもしれない。 そう不安になる浩輔だった。

 ……というのも湊には話してないのだがバリタチを自認する浩輔も気を許すと 路地に連れ込まれて貞操の危機っていうのが、実は数度あったのだ。 それに浩輔を気にいってるらしいロバートという男にストーカーまがいの事をされているのだ。 どうみてもただの東洋人の男の自分に可愛いだのセクシーだのと花を持って待ち構えていた事もあった。 湊を連れてくるまで無視を決め込んで気にもとめなかったが、今度は独りじゃないのだ。

 自分のような男ですらそうなのだから、湊ならどうなるのか?そう考えると次第に不安になってくる。 まじにボディガードを雇おうかなあと考えるが、そのボディガードが湊を気に入ったら などといらぬ心配で堂々回りをしてしまう。

 ふと隣の湊を見るとフライトアテンダントにオレンジリキュールを強請っていた。 そういえば、さっきも飲んでいなかったか?

 「湊、それ以上飲むな」

 「だって、これ美味しいよ」

 すでに湊の眼は据わっており、(浩輔には色っぽくしかみえないのだが)かなり危険な状態だった。  

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