曇りガラスの向こうに降る雪は

5万HIT記念



 白、ピンク、赤、紫 そこは花園から溢れ出たドレスの洪水。
まばゆいばかりの色にそれぞれが主張しあい怖いくらいだ。 こんなところにいつまでもいたら、窒息してしまう。

 水上浩輔(みなかみ こうすけ)は、婚約者の優美に連れられて有名ホテルに付属しているブライダルコーナーに初めて足を踏み入れた。
 ここはいかにも女が夢見そうな場所で、まともな男は5分で神経をやられてしまいそうだ。
夢中になってドレスの選定をしている優美からそっと離れて、水上が窓際に眼をやると、窓の外からディスプレイをじっと眺める美少女が見えた。

「女ってどうしてこういうのが好きなのかな」

そう苦笑してからじっとその子を見つめ直した。

「あっ」

と小さく叫んで水上が立上がった。

「ごめん優美、この埋め合わせは必ず後でするからさ」

あっけにとられて返事を忘れている婚約者にそう声をかけると水上は走り出していた。

「上月.....」

 長くウェ−ヴのかかった髪、長いまつげに細い眉、花柄の品のいい高そうなワンピース そしてピンクのルージュ。誰がみても綺麗な少女。

「上月....だよな?」

 上月と呼ばれた少女は我に返ったように水上を見つめた。 そしてはっとした顔をして恐怖に顔をひきつらせる。

「み...みなか....み」

その場から慌てて飛び退くように後ろに後ずさると 一目散に駆け出した。

「まて、まてよ上月」

 上月がワンピースの裾がじゃまをして上手く走れないでいる間に水上は距離をつめて その細い腕を捕まえた。

「痛い、放して、何するのよ」

顔は誰がみても美少女だったが、その野太い声が男を主張している。

「大声出すなよ」

「何よ。放さないとケーサツ呼ぶわよ、このちかん」

「どこの警察がおかまを助けに来るんだよ。大声だしておかまを皆に知られて困るのはお前だろ」

 とたんに上月の力が抜けて水上を睨み付けた。
その隙に水上は乱暴に上月の腕を引っ張って無理矢理タクシーに乗せる。

「冗談じゃないわ。これから出勤なのよ、あんたに付き合ってる暇はないわ。 例え暇が会ってもあんたの顔なんか見たくないけど」

都心のマンションにタクシーがつけると、また上月は抵抗始めた。

「もう、あんたの好きにならないのよ。昔の私と違うの。私はね、すごく高いのよ。 その辺のやり放題のBOY達と一緒にしないでちょうだい」

「払ってやるよ」

上月はばかにしたように水上をみた。

「一晩50万よ」

「いいよ」

そういって水上が財布を出した隙をねらって上月はまた逃げようとした。

どすっ

思いっきり上月の鳩尾に水上の拳がひねりをいれて食い込む。
「うっ」
と呻くと上月はす〜と気を失っていく。
それを軽々と肩に担いで水上はエレベーターのボタンを押した。

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