霞みの煙る山並の(2)-4

ライジング・サンに載ったものを先に読んでね



 「ふざけんな、冗談じゃねーぞ」

 近藤は勇真の頭をぽかりと殴るとソファから立上がった。 そんな近藤を勇真は顎に手をやって興味深そうに眺めている。

 「やってられねー。もう帰る」

 そういった近藤の腕をぐっと引っ張って後ろから顎を掴むと 耳許で囁いた。

 「じゃあ、僕が下になりましょうか?」

 びくりとしてから、泣きそうな困惑した瞳で勇真を捉える。

 「おやじをからかって面白いのかよ」

 そう言って無理に振りほどく近藤の手に勇真の腕は力無く下に落ちた。

 「……からかってる訳ないじゃないですか。僕はずっと先生が好きだった。 先生が顧問だった生徒会に入ったのも、こっそり先生の跡をつけて知った『psychomachy』 に年令を詐称してまで勤めたのも先生の気を引きたかったからです。でも、僕は自分の都合のいいように誤解していただけみたいですね。 先生は『psychomachy』の素直なアランがお気に入りだった訳で僕の事を好だった訳じゃない」

 違うと叫びそうになったが、近藤はそれをぐっと堪える。何度も扱くように噛んだ唇が赤く変化した。

 それを見つめて勇真は掌を上にして玄関を指し示すと力無く微笑んだ。

 「まだ、タクシーは掴まる時間ですね。お引き止めして申し訳ありませんでした」

 急に態度の変わった勇真に戸惑いながら力無く玄関に向う。 おずおずと振り返ると勇真はすでに食器を下げに台所に向う途中だった。

 「なんなんだよ」

 近藤は次第に腹がたってきた。 こんな状態で放り出され、好きだと言われたって何を信じれば良いと言うのか? 玄関からでると近藤はタクシーも拾わずにとぼとぼと歩き始めた。

 生徒会や『psychomachy』に近藤が目当てで入ったという勇真の話はまさか本当の事だろうか?

 「そんなばかな……」

 生徒会での近藤への態度、そして客とボーイの域を出ないアランの態度 あれのどこをとったら近藤への好意に繋がると言うのか? 自分のマンションを目指してとぼとぼと歩道を歩きながら近藤はため息をついた。

 自分はアランをどう思っていたのだろう? そしてアランが近藤だと知った時、たしかに戸惑いもあったが喜びの方が大きかったのでは無いか? でも……あくまで相手は高校生だ。一時的に熱をあげても、新しい出会いがあれば忘れるのも早い。

 ふ〜

 近藤は深いため息をついた。 大人の自分が溺れてどうなるのだ。何の経験値も無い癖に自分のこの若い子が好きな性癖をなんとかしよう。 そう決心する。

 ふ〜また、深いため息が洩れる。

 そうさ、俺だって年上にならもてない事も無いのだから。

BACK  WORK  TOP NEXT