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ライジング・サンに載ったものを先に読んでね |
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「全く、しっかりしてくださいよ。先生。あれだけ注意していたじゃないですか」 「お前こそ何考えてるんだ。なんであんなところで待ってるんだよ」 「僕が待ってなきゃ貞操の危機だったじゃないですか、もしかして その自覚もなかったりします?」 タクシーの中で話す会話じゃないだろう。近藤は黙って勇真を睨み付けた。 それを何も気が付かない様子で勇真は近藤のお尻を撫であげた。 声をあがられないと解っての悪戯だ。全く質が悪い。 近藤はぐっと下唇を噛む。 『後で覚えていろ。二度と俺のマンションの敷居を跨がせないぞ』と。 もっともマンションに敷居はなかったが、そんな事は近藤にとってどうでもいいことだった。 「全く武田先生ときたらは油断も隙もないですね」 勇真はまだ怒っている。 「油断も隙もないのはお前の事だろうよ」近藤は小さく呟いた。 タクシーはそろそろ勇真の家の近くにきた。 「ほら、ここで降りろよ」 タクシーを停めると近藤がしっしっという風に勇真を降ろそうとした。 「今夜両親がいないんです」 勇真がぽつりと呟く。その顔はまさに頼り無げな高校生の顔だ。 近藤は眉間に皺を寄せながら勇真と一緒にしぶしぶタクシーを降りた。 なんだか騙されてるような気もするが、仕方なく家まで送る事にした。 時間が早いからまだ、ここで降りてもタクシーは掴まるだろう。 「先生、早く早く」 無邪気に家へ招き入れる様子はやはりまだ高校生だなと近藤は少し安心した。 「オヤジ達、海外で学会があると夫婦でいっちゃうんですよ。仲が良いっていうか、 放任主義っていうか」 そういって居間に案内されて紅茶を出された。 美味しい。 「ウヴァのシーズナルか?旨いな」 「わかりますか?僕、今紅茶に凝ってるんですよ」 そういって勇真は何気なく安心しきっている近藤の隣に座った。 「先生は御自分の事をもう少し自覚した方がいい」 勇真は近藤の右耳のあたりを大きな手でつかむと徐に唇を奪った。 「な、なにを………」 「何をって先生、うぶな事言わないでください、恋人達がすることといったら……」 にやりとすると思いきり体重をかけてのしかかってくる。 「やめろ、やめろってば」 「やめない……」 「淫行で逮捕されるのは俺なんだぞ」 「知ってます。実は先生が抵抗したら、この前のホテルでキスした写真を 公表しちゃおうかな……なんて思ってるんですよ」 「冗談だろ?」 「冗談です」 本当にこいつは喰えない奴だ、同情した自分がばかだ。近藤はそう思ったがいまさらだった。 |