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ふと目覚めると温もりを感じて驚いた。 そこにユウがまだ隣で小さな寝息をたてている。
昨夜は家に帰らなかったんだな。 そう思うと僕の心の中はほっこりと暖かくなる。 ユウの寝顔を見るのは本当にひさしぶりだ。
まるで幼い天使のようにあどけない顔でベットの隅におさまっている。
僕はたまらずそっと唇に舌をしのばせた。
ユウの寝顔を見るだけで幸せな気持ちになってしまう、単純な僕。
もしかしたら一生ユウはこんな僕の気持ちなんてきっと解らないだろう。
その真っ白な肌に散った昨日のなごりを見てるだけで僕はまたその気になってしまう。
そのまま柔らかな髪に触れようとしたら、ユウがぱっちりと目をさまして僕の手を掴んだ。
「好色な奴だな。昨日たっぷり激しくやったのにまだやる気なのか?もう朝なんだぜ?お前って顔に似合わずスケベだよな」
ユウは目覚めていたらしい。
唇だけのキス。
ぶつかるようなキス。
腕をまわしてむさぼるようなキス。
キス、キス、キス
まるで本当の恋人達のように、僕らは見つめあってはキスをかわす。
せつなくなってたまらなかった。
「俺の道場の前でデートなんかするなよ」
ユウが唐突に掠れた声で囁いた。
僕にはなんの事か一瞬解らずに思わずユウをみつめた。
「知ってるよ。本当はお前、女の方が好きなんだろう。
俺を女の変わりに抱いてるんだろう」
「まさか」
俺は思わず叫んだ。
「今さらお前以外勃たないよ。男とか女とかそれ以前で....
それよりお前こそ浮気してないだろうな」
「浮気ってなんだよ。恋人じゃあるまいし」
「たしかに…そんなんじゃないけど」
「帰る」
「送っていくよ」
ユウは僕の車に乗りたがらない。 なぜかは知らないけど。
「いいよ。もう、始発も出るだろ」
「いいじゃないか、それぐらい。送っていくよ。いったいユウは僕を何だと思ってるんだ?」
そう言われると僕もついイライラして余計な事まで言ってしまう。
「何って......」
ユウはそこで少しだけ言いよどんだ。
「セフレだろ?セックスフレンド」
「セフレ...?」
僕はそこで絶句して。
嘘だ……2年も付き合っていてそれが面と向っていう台詞か?
こんな形ではっきりさせたく無かった。
ショックで口も聞けそうにない。
なんか涙も浮かんできたような.....。 だから僕はそのまま絞り出すように唸った。
「帰れ、当分お前の顔なんか見たくない。」
もう、これは喧嘩なんかじゃない。俺は振られたんだ。
俺はただのバイブか棒のかわりみたいものだ。
ちくしょう〜〜〜〜。
「だから帰るって言ってんだろ」
ベットに伏せた僕の背中にユウはそれ以上の憎まれ口を返してこなかった。 そのうえ帰る気配も感じられない。
僕は思わずベットに俯せた。 頼む帰ってくれ。このままなら僕はお前の前でみっともなく泣いてしまいそうだ。
どうして僕一人がこんなに苦しくてユウはあっけらかんと『セフレ』なんていうんだ。
ユウにだけは泣いてるみじめな姿を見せたく無い。だけどこれ以上ユウにいられたら絶対泣いてしまう。
「じゃあ、さっさと帰れ」
ドアが閉まる音がした時、ユウの声が聞こえた。
「…好きだ…」
その吐息のような声を聞いて僕はは慌てて振り向いてドアを開けた。 なんだって?今なんといったんだ、ユウは?
僕は耳を疑ってユウの整った愛らしい顔がいつになく凍り付いているのを見つめていた。
きっと今のは聞き間違いに違いない今の台詞がユウの口から出てくるはずがない。
決してない。
好きだ?好きだなんてユウが言う訳が無いのに、どうして僕はこんな都合のいい空耳までが聞こえてくるんだろう。
未練たらしい自分が腹立たしかった。
口も聞けずに固まってる僕を見てユウはそのまま視線を外して振り向きもせずにエレベーターに向っていく。
「待てよ。待ってくれよ。」
僕は慌てて、ユウを追いかける。
「お前が帰れっていったじゃないか」
エレベーターのボタンを押して背中のまま振り向きもしないユウの弱弱しい声が微かに聞こえた。
「だってそれはセックスフレンドなんてユウがいうからだろ。な、まず、部屋に戻ってくれ」
「俺はもう、お前としたくない」
僕は耳を疑った。どういう意味だ?
やっぱりさっき聞こえたのは好きだという言葉だったような気がしたのは
俺の都合の良い俺の空耳らしい。
「お前としてると俺が俺じゃ無くなるようで怖いんだ。暫く連絡しないでくれ。お前に彼女が出来たらそれはそれでいい。
俺も当分連絡しない」
そういうとユウはやってきたエレベーターにさっと乗り込んでドアを閉じるボタンを押す。
何か言いたかったはずなのに僕は固まったようにそこを一歩も動けなかった。
こんなことってあるのか?
僕はどうしたらいいんだ?どうしたら。わけがわからない?
もう、2度とユウが僕の家に訪れる事はないだろう。
それどころか、あんなに冷たく追い出した僕はセフレだってもうきっとお役御免になっちゃっただろう。
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