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酷使される精神 20 |
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「あ、ちょっと待て……」 雄斗が身を捩るが竜斗は離さない。もともと身長差など殆どないのだ。 「うぅ……あ」 台所に雄斗の色っぽい声が拡がっていく。 「待てってば。そんなに激しくキスしたらベッドまで持たないよ」 雄斗がそう唸るが竜斗はまるで聞こえないかのように雄斗の唇を貪ってゆく。 「待って、ほんとにどうした?何かあったのか?」 雄斗がやっと竜斗から離れると肩で息をしながら両手を膝につく。 「佐野って誰だよ。海野と久住ってどう言う関係?マンションって海野に買ってもらったのか? 幼馴染みってどう言う意味だよ」 竜斗は一気に捲し立てた。 雄斗は唖然としている。いつも冷静でどちらかと言うと気弱なお坊っちゃんに 見える竜斗がこんなに取り乱すなんて。 「待て、順序だてて話そうぜ?いったいなんでそんな話になったんだ? 海野達が話したのか?」 ダイニングの椅子に座り込むと竜斗は頭を両手で抱えるようにした。 それを後ろから雄斗がやさしく肩を抱く。 「ぐちゃぐちゃだよ。今日は仕事にならなかったから帰ってきた。」 「竜だけが俺が始めて抱きたかった唯一の男だって今朝、俺の気持ちを話したばっかりじゃないか」 「その後、マンションの管理費の事で海野さん達が来たんだ。俺、何も知らなかった」 「だってそれは昔の話だよ、マンションだって借りただけだ」 「それに海野さんは俺の事、佐野さんって言う人と間違えた。同棲中の幼馴染みだからって……。幼馴染みって誰だよ」 雄斗はそこまで聞くと真っ赤になった。 それをみて竜斗はますます不機嫌そうに雄斗を睨み付ける。 「幼馴染みって……お前の事だよ」 雄斗はバレたものは仕方ないという感じで仕方なく答えた。これだけはジョーカーとして取っておきたかったのに。 「俺のどこが幼馴染みなんだ?」 竜斗の表情は固いままだ。多分雄斗が変な言い逃れをしてるのだと思っているのだろう。 「……小学校で隣のクラスだったじゃないか。俺、時々お前の靴を隠したりして……」 竜斗は狐につつまれたような顔をしている。 「同じ小学校?お前と?」 「やっぱり覚えて無いのな」 雄斗の顔が意地悪に変化する。 「お前は俺に階段でリコーダーを拾ってくれただろ。御丁寧に落としたリコーダーをお前の綺麗な ハンカチで拭いてくれたよな。あの頃からお前はちょっと気のある女の子には優しいフェミニストだった」 竜斗の瞳が宙を泳ぐ。そういえば、たしかにすごく綺麗な女の子に落としたリコーダーを拭いて渡した記憶がある。あの子がまさかまさか雄斗だったのか。俺の初恋だった子が……。 今度は竜斗の方が赤くなる番だった。 「俺はお前をずっと覚えていたぜ?やっぱり俺を女だと勘違いしてやがったんだな。ガキの頃から気障な奴だよ。お前って」 そういって雄斗は余裕で竜斗を抱き上げる。勿論お姫さまだっこだ。 「所詮お前の好きなんて口だけなの。俺様の海よりも深い愛情には、かなわないって今朝身体で教えてやったろ?」 竜斗の不安だった永年の心の氷山が一気に融けてゆく。 俺の方が夢中だと思っていたのに……お前って奴はなんて不器用なんだ。 「雄斗、お前が好きだよ。誰かの事をこんなに好きになった事は無い」 恥ずかしさよりも喜びで全身が溢れだしそうだった。 「俺もだよ。今夜も朝まで寝かさない」
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