KARATE2

酷使される精神 19



 洗面所の鏡で全身を映してみる。特別おかしなところはなさそうだ。 部活はともかく、テストが近いので学校を休みたく無い。 休んで楽になるならいいが、休んでも自分で自分の首を絞めるだけだ。 竜斗が作ってくれた朝食を少しだけ食べて、急いで家を出る。 竜斗がいないなら、ここにいる必要なんかない。学校の方が仕事が捗るので 学校にでも寝泊まりしたいくらいの雄斗だった。

 私立の中学は勤めた事が無いので知らないが、公立中学の先生達は公務員。 つまりやる気のない奴はとことんやる気がないという事に雄斗は勤めてから気が付いた。 自分が中学だった時はそんな事に関心がなかったし、高校は私立だったから先生は 皆熱心で熱心じゃ無い先生は当然仕事に溢れていたからこの世界に入って知った事だった。

 実はいま、雄斗を悩ませているのは、同じ学年を担当してる小松というやる気のない 教師だった。やる気のない癖に文句の多いしかも後ろ向きといい雄斗の最も苦手なタイプだ。

 そいつは、32歳。結婚して子供もいる癖に、バイで雄斗に興味があるらしい。 もしも雄斗が普通のヘテロならもしかしたら気が付かなかったかもしれないが、 小松は何かと理由をつけて雄斗の廻りを徘徊し、仕事を邪魔し、身体に触れたがった。

 その度に今まで感じた事のない程の嫌悪感が沸き上がってくる。 普段でも気分が悪いのに、今日の雄斗は様々な思いが重なり洒落にならない気分だった。

 「羽生先生、今朝はどうしました?」

 「ちょっと……」

 もうすでに校長や教頭には説明してあるのだ今さらこの男に説明してやる気はさらさらなかった。

 「なんでも先生のマンションに子供が押し掛けて一悶着あったそうじゃないですか?」

 こういう話だけ興味津々でしかもなにげに肩に手を置いてくる。雄斗はゆっくりとそれを払いながら

 「その件に関してはすでに解決済みですので」といって再び書類に目を落とした。

 「そうですか?大変でしたねぇ?先生も肩が凝ったでしょ?僕は按摩がうまいんですよ」

 そういって、撫でるように雄斗の肩に触れる。 雄斗の怒りが爆発しそうになった。ちょうどそのとき、

 「小松先生?羽生先生がいくら男だってそれ以上やったら立派なセクハラですよ。それにテストの範囲表をまだ生徒に出してないでしょう?生徒から苦情がきてますので、帰りのHRまでには配ってくださいね」

 教頭がやってきて雄斗に助け船を出してくれ雄斗の緊張がほぐれていく。 小松が教頭を睨みながら立ち去ると教頭はさも気の毒そうに雄斗の顔を覗き込んだ。

 「先生をみてると美青年も大変だなと思いますよ。今朝もお電話いただきましたが、大丈夫でしたか?」

 雄斗はゆっくりと顔をあげて微笑む。

 「えぇ、御心配をおかけしました」

 雄斗はこの教頭が結構気に入っていた。余計な事は殆どいわないのに、ちゃんと先生達のフォローを 怠らなかったし、40代ではあったがなかなかの男前だった。

 「解らない事は何でも聞いてください。先生はまだ新任なんですからね。」

 たとえ気休めでもそういってもらえるのは有り難かった。 授業が終わって最低限の仕事をすませるとすでに時間は5時をまわっている。 小松のようなやる気の無い数名の教師は別として、殆どの教師は学校に残って仕事をしている。 その時間は7時から10時まで及ぶ。あまり知られてはいないが教師には、残業手当てというものが つかない。何時間やってもつまりはタダ働きだ。

 給料に教員特別手当てという物があって、それが残業手当のかわりなのだが、小松のようなやる気のない 教師にも同じように支給されてるものだから、ある意味不公平だなと雄斗は思っている。

 雄斗の疲れた顔をみて、再び教頭が声をかける。

 「先生、今日は早くあがったら?」

 その言葉をありがたくきいて、雄斗はマンションに急いだ。 竜斗も残業が多いからまだ、帰っていないだろうという予想に反して玄関には竜斗の靴がきちんと揃えて置いてあった。

 竜斗が台所で何か用意している。雄斗は着替えもしないでいきなりおどかそうと竜の肩にキスをした。 しかし振り向いた竜斗の顔は笑っていなかった。

 何か知らないが相当怒っている。雄斗は竜斗の頭を押さえ込むと強引にキスをしかけたが、 その腕は竜斗に邪険に払われて雄斗は小首をかしげて後ろの方に退く。

 「なんだよ?なんか怒ってる?」

 雄斗が肩をすくめると今度は竜斗の方から強引にキスをしかけてきた。

BACK  WORK TOP NEXT