KARATE2

酷使される精神 15



「あの、幼馴染みって僕達の事ですか?」

「違うんですか?同じ小学校だって」

「同じ小学校?」

 竜斗は思わず反復する。 間違い無く中学と高校は雄斗とは違うはずだった。 小学校は確かに普通の公立だったが、そんな話を雄斗とした記憶はない。

「同じ小学校ですか?」

 竜斗は完全に混乱している。

「何か、不味い事言ったかな?」

 海野も戸惑っていた。そんな海野を制してから久住は真面目な目つきに戻ってなにやら資料を取り出した。

「羽鷲さん、僕達今朝の便でロスに帰らなくてはいけないので 、本題に入らせていただきます」

「でも、羽生君に直接おっしゃった方がよろしいのでは?」

「時間がないので、羽鷲さんにまず聞いていただきましょう。実は羽生さんに譲渡したマンションの件なのですが」

「マンション?」

 譲渡っていうことは雄斗がこの男からもらったということなのだろうか? マンションをもらう関係って?それにしてもマンションだぞ、マンション。いくらなんでもそんな関係で マンションはもらわないだろうよ。一瞬の間に竜斗の頭の中はぐるぐると廻りはじめる。

 「こちらで負担している管理費ですが、もし、このままあのマンションに住まわれないのであれば、 きちんとした形で処分される事をお勧めします。住まわれないのであれば管理費などの負担は今後こちらでは負担できかねまして。」

 管理費まで払っている?竜斗は卒倒しそうになる。 雄斗の奴、いったいなにを考えているんだ?インモラルっていっても限度があるだろう。

「何もお聞きになってないのですか?」

 真っ青な竜斗の様子に何も聞かされていないのを知って久住はさも気の毒そうに竜斗をみつめる。 これってまるで本妻に乗り込まれた愛人みたいだなぁ……竜斗はこの場に至ってもそんな事を呑気に考えていた。

「これって不味く無い?有賀の奴……」不安そうに海野が久住に囁く。「同棲してるっていうからさ……」

「……同居です」竜斗は力無く訂正した。

「羽生君はまた、そちらのマンションに戻るつもりだったんじゃないでしょうか?」

「しかし羽生さんは、当方で処分してくれと鍵を管理人に渡したようなのです。実はあのマンションはすでに羽生さんの名義になってまして、当方としても勝手に処分出来ない状況なのです」

 久住はすまなそうに書類を見せた。

竜斗は覚悟を決めて「解りました。私が責任持って羽生くんに処分させます」 といった。もう、半分やけくそである。どうせ、いろいろ雄斗の面倒をみてきたんだ。 こうなればとことんやってやる。

 そんな様子をみて海野が興味深そうに言った。

「ユウって強引に言う事きかされるのを嫌いませんか?それともあなたは特別なのかな? 正直もっとガタイの良い方を想像していたので、こんなハンサムで華奢な方の言う事を 雄斗が素直に聞くなんて、恋の力は偉大なんでしょうね」

「あまりそんな事をいうとまだ未練があるように思われるよ、笙。せっかく仲良く暮らしていらっしゃるんだ。邪魔しちゃいけないよ」

 せっかく仲良くと言われても自分はどこかで納得できないまま、ずるずる同居をはじめてしまったのだ。今回もエッチで誤魔化された気がするけど、結構な大げんかだったし、これでも仲良く暮らしていると言えるのだろうか?久住や海野や有賀が当たり前のように知っている雄斗のあれこれを竜斗は何も知らない。 それは、竜斗をひどく不安にさせた。

 考え込む竜斗を見て久住は意味深な感じで海野の腰に腕を廻す。  そんな様子に竜斗はあえて気がつかない振りをして車の鍵をとった。スターターボタンを押して エンジンをかけておく。

「よろしかったら、送りますよ」

「いえ、外に車を待たしてありますので。また近いうちに」

 そういうと久住と海野は嵐のように竜斗の心をかき回しながら部屋を出た。立上がろうとしたが、竜斗はエントランスまで送る体力が残っていなかった。昨夜は嵐どころか竜巻きに巻き込まれるように愛しあったのを身体が思い出させてくれていた。

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