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酷使される精神 14 |
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玄関では雄斗と誰かが押し問答している。 どうやら、雄斗の知り合いらしい。 ちょっと険悪な雰囲気でなんとなく竜斗は出ていきずらい。 「非常識だろ。何時だと思ってるんだよ。それにここは俺のマンションじゃないんだぞ」 「ひさしぶりなのに随分だな。朝迄待とうと思ったんだが、実は、外でお前の生徒らしいのが騒いでいるんだ。それってまずくないか?」 「それを早く言え」 動転した雄斗はその訪問者に返事もしないで飛び出した。 こっそりと顔を出した竜斗は、雄斗の後ろ姿を見つめる男が振り返った時、ばっちり目が合ってしまった。 「あの、何があったんですか?」 「多分、羽生くんの教え子の何人かがこの近くでもめているみたいで」 そういってから、朝から爽やかな笑顔の男はにっこりと笑って自己紹介する。 「朝早くにお騒がせしました。雄斗君とルームメイトだった海野と申します」 海野はすっと慣れた手付きで名刺を差し出す。ちらっと目に入った名刺には取り締まり役と書かれてあった。 「よろしかったら、雄斗が帰ってくる迄、お入りになりませんか?」 竜斗は部屋に招き入れようとした。こんな早朝に玄関先で話すのは近所迷惑だ。 海野の影からもっと大きな男がぬっと現れた。 「秘書の久住です。わたくしもよろしいですか?」 有無をいわさぬ強引さに竜斗は少し引いたが、 「もちろんどうぞ、コーヒーでも入れましょう」 そういってふたりを快く居間に招き入れた。 海野は無遠慮に品定めするように部屋を見回す。 「いいお部屋ですね。地下鉄からも近いし、広さも二人で住むには申し分ない」 海野の皮肉に竜斗は気がつかずに人懐っこい笑顔で頷いた。 「ありがとうございます。新しくはないんですが、手を入れてるので気に入ってるんですよ」 「雄斗と同居なさってるんですってね?もっと逞しい方を想像していたので ちょっとびっくりです」 いきなり振られた話題に竜斗の方はぎょっとしてカップを落としそうになる。 「失礼だよ、笙」 先程、秘書と名乗った男がなぜかファーストネームで海野をたしなめた。 「でも、たしかに綺麗な方だ。雄斗は昔から面食いだからな」 久住と名乗った男は竜斗の方を品定めしているように無遠慮に上から下迄眺めている。 『こいつの方がタチが悪そうだ』 竜斗は自らに警告した。 昨日の夜出会った男達と同じ視線だった。 自分がそういう対象に見られるのが慣れないせいでひどく落ち着かなかった。 「佐野さん」 海野が竜斗に向ってそういったが、竜斗は自分の名前ではないので 何かその後に話しが続くのかときょとんとした顔で待ち構えた。そうか、先程は玄関先だったので 後で自己紹介しようと思ってそれきりになっていたのだ。 「笙、表札見なかったのか?この方は羽鷲さんだよ」 今度は海野が驚く番だった。 「失礼しました。幼馴染みと聞いていたので、てっきり」 「幼馴染み?」 竜斗は聞き返す?俺達の事をいってるのだろうか? それとも先程間違えた佐野とかいう男と勘違いしてるのか? 竜斗はひどく戸惑っていた。 雄斗、早く帰ってきてくれ、と。 |