KARATE

酷使される筋肉 2



 普段ユウが誘ってくるのは特別何かあった時なのだろうか?
そういう時のユウは別人と思われる程乱れて、思い出すだけで 僕の息子が今すぐその気になって困ってしまうくらい素晴らしいのに。

 多分、僕とのセックスは嫌いではない…というよりかなり好きなのだと思う。もちろん僕にも彼との相性が最高だという自覚があるのだから。
でも、ユウは身体の関係以外、決して僕のプライベートに踏み込んでこようとはしない。 彼が関心あるのは僕の電話番号とスケジュールだけ。 多分、僕がどこに勤めているのかさえ興味ないだろう。

 それに比べて僕ときたら、ますます深みにはまっている。 彼に知られるとかなり不味いのだけどこっそりとユウの勤め先や、マンションにいったことさえもある。
一歩間違えればストーカーだっていう自覚があるから彼に知られて嫌われないように、それだけは気をつかっている日々。

 そう、本音を言えば僕はユウを独占したくてたまらない。

できることなら二人だけで孤島でいいから一緒に暮らし、誰にも見せずにただ、俺の帰りを待っていて欲しい。 もしも叶うならば監禁したいくらいに。

とにかく一緒に暮らしたいといった僕に、ユウは冷たい。

「やだね、俺はお前の女じゃねぇんだ。俺の好きなようにする。いいじゃないか、いつでもお前の性処理につきあってやってるだろう?それでじゅうぶんだろうが? それが不満なら他に男でも女でも囲ってくれよ。」

 結局ユウに嫌われないためには、今の関係をせめて維持するしかないと僕は再確認させられて深いため息を落とす。

 本当のことをいえば今の状態があまりにも苦しくて、結婚を決意して親に勧められるまま見合いまで決心したこともある。
つまり悪あがきと言うやつ。その時はそこまで僕は追い詰められていた。でも、結果を言えばセッティングを頼む事すらできなかった。せめて身体の関係が続いている間だけでも僕からはユウを諦めまい。

 それが僕の出した極めて情けない程消極的な結論。


 さて、話は戻って、全く彼に似合わないと思うのだが、ユウの職場はなんと空手道場。昼の1時から主婦や子供相手に教えて 夕方学生達が集まる頃 事務の仕事に変わる。午後からやってくる学生達に教えてるのは 師範代と思われる茶帯の大学生だった。

その大学生さえもどちらかといえば華奢な感じの男で。
僕もユウとつきあいだして初めて知ったのだが、驚いた事に 空手をやる奴の多くは他の格闘技とは全くタイプの違う華奢な感じの男が多いのだ。もちろん、それなりに筋肉はついているのだろうが、見るからにガタイのいいというプロレスでもできそうな男は殆どいなかった。まぁ僕のイメージが貧弱なだけかもしれないけど。

僕が「みんな意外と細いね」と露骨に驚くとユウが瞳を動かすだけで睨んできた。

「お前、柔道かなんかと勘違いしてるんじゃねぇの」

 そうか…と僕は初めて納得する。体格に恵まれない男達が大きな男に太刀打ちできるのが空手というわけなんじゃないだろうか。そう考えるとユウの気の強さに似合っていないこともない。
実は恥ずかしながら僕も、あまりに自分勝手なユウに体力任せに言う事を聞かせようとして、何度も酷い目にあって充分懲りている。  ユウの回し蹴りで、気を失い一週間こめかみに青痣が残った事もあった。 多分ユウに無理矢理言う事をきかせようなんて技術だけでなく体力的にも無理だろう。華奢に見えて彼は脱ぐと意外にがっちりと筋肉がついているのだから。

もちろんユウに嫌われるのが怖いから、そんな恐ろしい事をもう一度試す勇気は当然僕にはなかったけれど。
あぁ、この中途半端な気持ちはどこにいくのだろう。子供の時はセックスが恋愛の最終目的だと思っていたけれど今はそれが全くの勘違いだったと身にしみていた。
こんな蛇の生殺しのような気持ちのまま、こうして毎日が通り過ぎていくのだろうか。 それっていつまで耐えられるのだろう。

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