ドアを開けるとなぜか今日は雄斗も帰りが早かったらしく、靴がある。
「全くどうして揃えて置かないんだ」
入ったままの状態で脱ぎ散らかされた靴を見て竜斗はため息をついた。
ぶつぶつ言いながらも、雄斗の靴に脱臭剤を入れてから靴箱にしまう。
「ユウ?帰ってるのか?」
返事がない。
居間にはまるでヘンデルとグレーテルの小石のように歩いた方向に脱ぎ散らかされた背広とソックスそしてネクタイと続いている。
もう一度深いため息をつきながら、ソックスを脱衣所の洗濯ボックスに入れた。
それから背広を掛けようと寝室に入る
案の定そこにはベットの上には倒れ込んだそのままの形で雄斗が静かな寝息をたてていた。
そっと、肌掛けを引っ張ってかけ直してやる。
「寝顔は、まるで10代の少年だな」
この1月で23才になったとは思えない程、幼い顔をしている。
雄斗の寝顔を見ているうちに、光田の事も、エントランスで会った常識のない中坊達の事も、
脱ぎ散らかされた物達も小さな事のような心持ちで胸がほわ〜と暖かくなる。
竜斗は雄斗の唇に乾いたキスをすると、胸に拡がった小さな幸せを材料に夕御飯のメニューを考え始めた。
実は、雄斗は起きていた。
帰ってくるなりキスしてくれた事は嬉しかったけれど、胸のつかえは取れない。
実を言えば今日、教頭に頼まれて郵便局に行く途中に雄斗は見てしまったのだ。
エスニック料理店から出てくる竜斗と光田の姿を。
それは偶然に出会った二人という雰囲気ではなかった。
今日はじめて会った訳でもなさそうだった。
ついでに付け加えるなら『竜、ちょっと待ってよ』たしかに光田はそう言った。
(『リュウ』なんて呼んでいいのは俺だけなのに)
面白くない、非常に面白くないぞ。
でも、なぜか直接竜斗に尋ねる勇気がなかった。 さっさと光田との関係を問いただせばいいのだが、
自分の方からそれを言うのはなぜか憚られる。
(どうしてリュウは何も言ってくれないんだろう。もしかしたら俺が聞かなければ黙ってるつもりなんだろうか?)
率直に言うと雄斗は光田の事ををよく知らなかった。
ごくたまに面白くない事があった時に遊びにいく発展場のメンバーの一人だというだけの知り合い。
高校時代の先輩である有賀の紹介で何度か一緒に遊んだ事はあった。
確かに光田は自分とは比べ物にならないくらい、男らしくていい男だ。
(その上光田は年下だし)
雄斗はタメである事に少しだけ引け目も感じている。
根拠はないが恋人は年下の方がいいに決まっていると無邪気に信じていた。
自分は無理に押し掛けてきたけれど、一緒に住むのも迷惑かもしれない。
雄斗が行動を起さなければ、同棲生活もなかったかもしれない。
(それに、あいつらを連れてきた時迷惑そうだった)
雄斗の了承も得ないで勝手に開いたパーティが今さらながら悔やまれる。
不安が次々と押し寄せてきて、雄斗は押しつぶされそうな気がした。
居間からは竜斗のハミングが聞こえてくる。
(俺をこんなに苦しめておいて、なんであんなに機嫌がいいんだよ)
お腹は空いていたはずだったが、今夜は何も食べられそうにないと
雄斗はまた重くなった頭をベットに深く沈めた。
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