KARATE2

酷使される精神 6



「うしゅ〜先輩〜、待ってくださいよ」
「昼飯くらい、勝手に喰えよ。ついてくんな」
「ちぇっ。冷たいな。勝手について行こっと」
光田はみかけよりずっと甘えん坊だった。竜斗の最も苦手なタイプだ。
仕事の時は仕方ないが、休憩時間まで竜斗は光田がついてくるのがうっとうしくて仕方ない。
なるべく離れようと小走りで距離を稼ごうとするがなにせ足の長さが違うのであっという間に追い付かれてしまう。
「たまには奢ってくださいよ。せ、ん、ぱ、い」
「ぜった〜い。いやだ」
光田はすっと竜斗の横に付くと小首をかしげるようにして顔を覗き込む。
「ユウって俺達の事さ、知ってるの?」
「何が俺達だ、お前と俺は何も関係なんかない」
実は雄斗に光田の事をまだ言えないでいるのだった。
もう、1週間経つのだから、そろそろ言わないとマジにやばい。
誤解されないでどうやって言えばいいのだろう。
ふと悩んでいると「ここに入ろ」
太い腕で掴まれて中へ、どうやらベトナム系の店らしい。
独特の魚油の匂いと訳の解らない民族音楽や民芸品が溢れている。
(雄斗となら絶対来ない店だな.....)
竜斗はぼうーっとそんな事を考えていたが、光田に釘を刺すのは忘れなかった。
「べらべら誰にでも俺達の事話すなよ」
「俺達って?まだ、何も進展なんかしてないじゃん」
「誰がお前の事を俺達なんて言うよ?俺とユウの事に決まってるじゃないか」
「俺って、凄いラッキーだな。竜と一緒の会社になって」
(こいつも全然人の話を聞いてない)
竜斗はため息をつく。
「おい、俺は一応、先輩なんだ。せめて羽鷲さんと呼べよ」
片頬でにやりと笑いながら、テーブルの下の竜斗の手をぐっと握りしめてきた。
「俺の事は光田康祐だろ?ココって呼んでいいよ」
叫びそうになるのをぐっと堪えてから、なるべくドスの効いた声で唸る。
「呼べるか」
まじにこいつってやばい。仕事だからってこいつの子守りなんかもう限界だ。
とにかく、雄斗にばれないうちになるべく刺激させないように今の状況を説明するには いったいどうしたらいいんだろう。
6時過ぎまでぴったり光田につきまとわれて我慢の限界に来た竜斗は残業を諦めて早々にマンションに戻った。
エントランスでは見ず知らずの中学生が数人騒いでいる。
全く、頭の痛い事だ。
関わらずに通り抜けようとすると管理人が飛び出してくる。
「羽鷲さん、お客さんだよ」
まさか?
「静かにさせてよ」
「僕の客じゃないと思います」
そういいながら、竜斗はちくりとした。
ユウの生徒か?と。
話を聞いてまた、生徒達が騒ぎ出す。
「え〜〜〜〜っもしかして羽生先生って男と暮らしてるの?」
「なんかやだ」
竜斗は完全に切れた。
仕事場でも疲れているのだ。マジ切れだ。
子供達を無視すると一人だけエレベーターに乗り込む。
後ろから子供達の叫び声がしたが、全く聞こえない振りをしてボタンを押した。

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