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![]() なぜ、こんなことになってしまったんだろう? 今まで話もしたことがなかった佐久間になぜこんな嫌がらせを受けるのかいくら考えてもさっぱりわからない。自分では記憶にないが俺は今まで彼に嫌われる何かをしただろうか?俺の存在そのものが気に入らないのか。 俺は足取りも重く翌朝早くに登校することにした。理由がどうであれ、佐久間にセクハラまがいの嫌がらせを受ける筋合いはなかったし、それなら早朝に飼ってる動物達の世話をしてしまった方が無難だと判断したからだ。 待ち伏せされる訳もなかったが、嫌な予感がしていつも通らない音楽室の前を通って生物部に行こうとした。 音楽室から美しく物悲しい調べが流れてくる。ピアノのことはわからない俺も思わず足を止めて聞き惚れる程の腕前だ。 普通、クラシックなど眠たくなるだけの音楽だと思っていたけれどなぜ、この調べを聞くだけで心が締め付けられるのか。 きっとこれは報われない恋の曲だ。切なく歌い上げるピアノの旋律は俺の身体を優しく包み、そのまままた風のように通り過ぎた。 いったいこれほどまでに心をとらえて放さない見事な演奏を誰が弾いてるのかと音楽室をおそるおそる窺い見るとなんと弾いていたのはなんと佐久間だった。 一瞬俺は自分の目を疑った。あいつがピアノなんか弾くタイプには到底みえなかったからだ。切なく歌い上げる繊細な旋律があの無神経そうな何を考えているのかわからない男の指から紡ぎだされるものとは到底信じ難かった。 俺は多分焦っていたのだろう。そのままそこを早々に立ち去ろうとしてドアにぶつかり小さな音を立ててしまった。 佐久間はピアノを弾く手を休めずにちらっと顔だけこちらに向けたが俺だと気がつかないような素振りで顔を前に戻す。完全無視……。俺は固まったまま転げるようにして生物部の部室に入り込み慌ててカギをかける。いったい何を畏れているのか?同級生のちょっとガタイの大きな男に。 実際、その後佐久間は生物室にも訪れることもなかったし、放課後になにか仕掛けてくる事もなかった。 だからもしかしたら、ただ、からかわれただけなのかもしれないと俺が思いかけた頃だった。 俺の実家はさほど大きくもない酒屋と米屋をかねた小さな店だ。 おやじが配達にまわっていて、俺の母親が店を切り盛りしながら、クリーニングの代理店も兼ねている わりとどこにでもある店だった。 ところが父が病に倒れて発覚した事は、店を新しくしようと父が他の事業にも手を出していたのだ。 店を畳んでも払いきれない借金が露見し、しかも入院費に多額のお金が必要だった。 配達ができなくなり、看病のために店を空けがちになった俺の実家は壊滅状態だった。 そうなると親戚は冷たいもので、誰もよりつかない。 俺は学校をやめて実家で働こうと決心しかけたころだった。 帰省しようとした日曜日の早朝、俺のアパートの前に黒塗りの車が止まっている。 そこから出てきたのは佐久間で、「お前の実家の事で話がある。乗れ」 と言われてそのまま車に乗せられた。 「学校をやめるのか」 「仕方ないんだ。余裕がないし」 「やめなくてもいいようにしてやろうか?」 俺は佐久間の意図が解らずにまじっとその顔を見つめてしまった。 「調べたが借金は2000万くらいだ。たいした金額じゃない」 「たいした金額だよ。俺の家にとっては」 佐久間はちょっとだけ口角を上げた。 「おれにとってはたいした金額じゃない。それを払って、お前の実家にバイトを派遣しお前の住むところも 提供してやろう」 俺は背中に寒いものを感じて無言のまま佐久間を睨み付けた。そんなことをしてもらえるほど 俺と佐久間は仲良くないし、逆に俺は佐久間を避けていた。 もしかして、そのかわりに俺の臓器でも提供させるわけじゃないだろうな。 そう思っていると、 「無論、条件がある。お前は俺の家の離れに住んで俺の家のペット係をする。調度いいだろう。学校でもペットの世話をしてるんだからな。お前のお得意分野だろ?」 俺は佐久間の真意を計りかねていた。 「それだけじゃないだろ」 「まぁな、お前はばかじゃないようだ。そう、お察しの通りお前も俺のペットになるんだ。お前が言う事を聞くなら可愛がってやってもいい」 俺は血の気が引くのを感じた。臓器を取られて東南アジアあたりに売り飛ばされた方がましか? それともやはり佐久間のペットにでもなった方がましなのか? 実際クラスではペットとばかにされた俺だったが、本当にペットになるなんて思いもしなかった。 第一いくら俺が脆弱な体つきをしているとはいえ、女にはみえないと思うのに、まさかこの前のセクハラまがいのことはただの嫌がらせではなかったのだろうか。まさかとは思うが、佐久間はホモ?と言うやつか? 決心も付きかねて首が項垂れる。 「このまま、家族で破滅するよりましだろう」 そう言われれば、拒否する理由はどこにもない。 追い討ちをかけるように佐久間が畳み掛ける。 「わかってるだろうが、今のままならお前の家族は店も家も追われておやじさんの入院費だってままならないだろう?中途半端な医療を受ければ助かるものも助からない事だってある。お前の考えひとつに家族の運命がかかっている事を忘れない方がいい」 俺は小さく頷いた。もう逃げ道なんかなかった。 「そんなに怯えて震えなくても無茶はしないさ」 いつのまに俺は震えていたのか。俺は最後に残った負けん気で呟いた。 「む、武者震いだ」 佐久間はにやりと笑って 「お前のそういう気の強いところも気に入ったよ」 そういうとぐっと腰と顎を引き寄せ、運転手がいるにも関わらずそのまま口を俺の唇に押し付けてきた。 車が大きな門に到着する。今まで長い塀を通り過ぎたと思ったが、門も車がそのまま入れる大きさで大きな屋根もかかっていた。 このままこの屋敷に連れこまれることに抵抗はあったがもうどうしようもないという 絶望にとらわれたまま、このまま流されて行く。 そのまま車で使用人屋敷に向かうらしかった。 唇こそはなされたが、ひざの上の腿の微妙な辺りをそっと撫でられて俺の緊張はピークに達する。 このままこの屋敷の物の怪にでも食われてしまうような心構えでこれ以上震えぬように がっちりと歯を食いしばった。 母屋と呼ばれる屋敷には遠く及ばなかったが俺が案内された使用人屋敷も10帖のリビングに8帖の寝室。近代的なバストイレと最低限のキッチンがついて十分な広さがあり、 俺が家族と住んでいたマンションより広く部屋数もこのまま俺が一人で住むには十分だった。 外観は伝統的な日本家屋だったか内部はハイテク技術が張巡らされ、次々現れるその先端技術に 俺はいちいち驚かされてばかりだ。 佐久間はそのまま引きずるように強引に俺を寝室に連れ込んだ。 再び唇をあわせると今度は遠慮なく舌が滑り込んでくる。首を振って避けようとすると 「逆らうな」 ドスの聞いた声で唸りながら、いきなり俺の首に革でできた首輪のようなものを今にもはめようとするところだった。 小さな鋲の付いたそれは、正に首輪そのもので、俺は激しく抵抗したが、もとより俺が佐久間にかなうはずもなかった。犬のように首輪をつけられて、そのまま真鍮のベッドの柵に繋がれた。 「暴れると首輪がしまるよ。窒息しそうになりたくなかったら、抵抗しようなんて考えない事だ。」 |