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「冗談じゃない!絶対反対!」 俺はでかくもない声を張り上げる。 どんなに譲歩してもこれだけは譲れない。 新しいクラスの親睦を深める為にハムスターを飼うだなんてあまりにもばかげている。 僕がやっとの思いで入学できたこの名門公立高校は県下でも屈指の進学校でそれこそ聞いた事もないような郡部からも生徒が集まって来ているものだから、クラスどころか学年に同じ中学出身者は自分一人なんて言う事も珍しくはない。 だから、クラスメイト同志の親睦を深めたいって気持ちは分からない訳ではない。 100歩譲って、金魚とかじゃだめなのか?それだって本当は嫌だけど。 「いったい誰が世話をするんだよ?小学生じゃあるまいし当番制か?」 そういった俺香咲鈴音(こうさきれおん)に向く女子の視線が冷たい。 「いいよ、別に鈴音くんは、世話なんかしてくれなくたって」 「そうそう、ペットがペットの世話なんかできるはずないし」 すっと流し目で俺をみる女子の目は凍り付くようで悪意に満ちていた。 昨日までは可愛いだのクラスのペットだのと囃し立てていたくせに手のひらを返すようだ。 俺だってこんなまだクラスのメンバーと仲良くなる前からこんなことは言いたくないに決まってる。 だけど、だけど言わずにはいられない。 俺には言わなきゃいけない理由があるから。
一部の強引な女子とそれに迎合する男子と事勿れ主義のメンバーで結局ハムスターが クラスで飼われることになった。 こうなりゃ俺は脱力したまま見守るしかない。決まってしまったらもう、仕方ないのだ。 次々と子供っぽい発想の係りとやら、当番が決められる。 決まってしまったなら勿論俺だって引き受ける気でいた。だってクラスの一員なんだから。 それなのに、児島あかりのこの一言でクラスの雰囲気は決まってしまった。 「レオンくんは抜きで当番決めましょう。誰もいない時はレオンくんに頼むかも知れないし」 思わず俺は天を見上げる…最悪のパターンだ。 俺はクラスの女子からすっかり冷血人間の判定をされ、男子からは同情と侮蔑の混じった顔で見られすっかりクラスから浮きっぱなし。 こうなった以上部外者の俺はあの『みるく』と名付けられたハムスターを見なけりゃいいんだっていうことは良く分かってる。でも気になってしまうんだ。 あの檻に入っている小さな生き物がジッと俺を窺ってな気がして。 俺の予想どうり最初の一週間も過ぎればクラスの中にグループもできて雰囲気が出来上がる。 そうなるともう、誰もハムスターになんか関心を示さない。 当番を忘れて餌をやらない男子はまだましだ。問題は時間でも当番でもないのに『みるく』に勝手に餌をやる一部の無責任な女子だった。 「さっき当番がちゃんと餌をやっていたぜ」 俺はよけいな一言だと分かっていながらつい声をかけずにいられない。 「だって、みるくが手から食べるのが可愛いんだもん。第一レオンくん係でもないのに関係ないじゃん」 「そうそう私達、みるくを可愛がって世話して文句言われる筋合いない」 児島はきつそうな顔で俺を睨み付ける。 俺が何をいっても他の男子が『レオンのいうことだ、許してやれ』だの『児島…レオンを虐めるな』 だのと俺を庇うからすっかり女子のボス的存在の児島に嫌われてしまったらしかった。 実際、児島は気が強く頭も固そうで男子がいかにも敬遠したくなるタイプなのだが、俺は彼女が嫌いじゃなかった。気の強い生意気な女を組み敷いてあんあん言わせる妄想が実は俺の密かな愉しみだったりするのだが、むろんクラスメイトには秘密だ。 結局彼女達はヒマワリの種をいくつかケージごしに食べさせてわざと俺の肩にぶつかるように出ていった。 全く可哀想なやつだ。このハムスターも…。結局こんなところで飼われたら、誰が御主人様かわからないまま、その一生を過ごすのだろう。クラスの誰かがきっと世話をする。今日はしなくても明日は誰かが……。 そんな気持ちが、このハムスターを誰の責任でもない不安定な状態にしてるのになぜ、彼女らは分かってやらないのか。 小さくため息をつくと俺は仕方なくケージの中の餌箱と寝床を掃除する。 案の定ここ数日誰も手入れしていないのは明らかだった。 多分、当番は決まっていたんだろうが、受験戦争から解放された初めての夏休みにほとんどのメンバーは ハムスターの事なんかすっかりその存在を忘れていたようだった。 俺は生物部で飼ってるザリガニや蛙の世話があったから結局、様子を見に行ってそのまま世話をして帰るという日々が続いていた。 その日も世話をして帰ろうとするとばったりと佐久間に出くわしてしまった。 佐久間は同じクラスでありながら殆ど誰とも話さない奴でどこか壁を作っていた奴だ。 顔は整っていたが、がたいもよく近寄り難い雰囲気を作っていたので俺は一度も話したことがなかった。 「ぼうず…なにやってんだ?」 同級生に坊主なんて言われたくはないが、佐久間の迫力でいくと女子にペットとからかわれる俺など、ガキ臭く見えてもしかたないのかもしれない。 俺がむっとして黙っていると「お前、当番じゃねーだろ」とにやりと嫌な笑い方をする。 恐かったけどこんな男になめられるのは癪だったから、不機嫌そうに言い返した。 「誰もやらないから仕方ないんだよ。放っておけないから」 そのとたん、どすっと壁に俺は激突していた。 一瞬何がなんだか解らなかったが、崩れ落ちた身体を顎を掴まれて そのまま引き上げられる。 「な、なにすんだよ」 「いいから俺もかまってくれよ。お前は寂しそうにしてるやつをほうっておけないたちなんだろう」 そういうとぐっと腰を引き寄せられてそのまま唇を押し付けられた。 必死にもがき誰かに助けを求めようとしたが、口を塞がれているので「ん、んん…」といううめき声が鼻からもれるだけだ。 彼の無骨な手がしだいに下腹部の方に下りてゆく。俺はその思惑を悟って慌てて腰を引いた。 そのとたんにおもいっきり俺自身を握り込まれる。 「や…やめろ…って」 「なかなかいいもん、持ってんじゃねーか」 くすりと楽しそうに笑うと思いっきりそれを握りこんだ。 「う……っ!!!」 あまりの痛みに俺は気が遠くなりかけた。 「お前、可愛い顔してるのに男は初めてか?」 「当たり前だろ、変なこと言うな」 「そうか、経験すると男も悪くないぜ」 佐久間はそんな恐ろしいことをいうと今度はゆっくりと刺激するように俺のモノを扱き上げた。 「よ、よせっ」 もともと奥手ぎみの俺は自分でも滅多にしないその行為に息もつげぬ程感じてしまい、あっという間に絶頂まで引き上げられる。 あまりの出来事に俺は泣き出していた。ちきしょう…情けなさ過ぎ! 「生物部だったか?お前、ここで明日も同じ時間に待ち合わせようじゃないか。」 そんな事を言われて俺はますますショックでその場に崩れ落ちる。 「来なかったら、お前の家まで迎えにいってやるからな」 脅すようにそう告げられて俺はただ、呆然としていた。 |