<

仲秋の名月

beautiful moon in September


 「なんだ、この草は」

 学校から帰って部屋に入るなり雄斗はすっとんきょうな声をあげる。

 「あ、これ?ハーブだよ」

 竜斗は平然と答えた。

 「だからってなんだよ、この量は?ジャングルじゃないんだから」

 ジャングルは大袈裟だがたしかにいたるところにハーブが置かれている。

 ひとつふたつと少しずつ増えたなら部屋のレイアウトなどに無関心な雄斗は気が付かなかったに違いない。しかし、部屋中この処狭しと置かれているのだ。気が付かない方が不思議といえるだろう。

 「食事に使うに決まってるだろう?新鮮だし、間違いなく無農薬だろ?」

 呆れた雄斗は勝手にしろ状態で、すでに無言でスーツを脱ぐと腹筋を始めていた。

 『こんなに植物置いていったい誰が世話をするんだよ?っていうか、竜だって仕事してるのに これ以上家の仕事を増やさせたくないなぁ』

 専業主婦でもないのに、なぜこんなに一生懸命やってるのか解らない。

 『社長の息子だからこその忙しさもあるはずなのに』

 雄斗は腹筋に打ち込み汗を流しながら、竜斗の事が頭から離れなかった。

 竜斗は竜斗でどうしても最近、腑に落ちない事がある。 二人の関係だ。実はバカンスから帰ってから、雄斗は一度も上になってない

 ……いや、上にはいるのだが、もっとはっきりいえば、雄斗に抱かれてないのだ。 なぜ?と聞きたいのだが聞く事もできず、本来この形こそが本望のはずだから、文句もいえない。

 出会った頃、もともと騎乗位が好きな雄斗だったが立場が逆になってからというもの ほとんど、竜斗が押し倒される形になっていたのだ。

 昨日も実は押し倒されていたりする、でもちょっと意味が違うのだ。つまるところ騎乗位というヤツで結局一度だけ雄斗が二人の腹筋の間に攻められて歓喜の声を上げてから、竜も雄斗の中でイクことができた。

 でも、でもなんていったらいいのだろう。

 今イチ物足りないのである。

 雄斗にバックをここまで開発されてしまったのかと正直情けない。

 横をみやると雄斗が天使のような幼い寝顔で満足そうに眠っている、それを睨みながら徐に竜斗は立上がりトイレに向う。

 そう、つまり竜斗の方はちっともさっぱり満足できてないのだ。

 「くっそ……」

 竜斗は悔しそうに舌打ちをして、また盛り上がってきたものを自分で処理するしかなかった。 この状況を雄斗に知られたくない。

 なんていえばいいのか?疼いて仕方ないから……?お願い……。 あぁ……そんなうすらみっともない事言えるわけなんかないのだった。

 次の晩も腹筋を終えて汗を流してから、雄斗はそっと竜斗の肩に唇を落とす。

 「いい?」

 いいんだけど、ちっともよくない。ストレスが溜まる。そんな台詞を頭に掠めながら雄斗のキスを受ける。少しずつ雄斗の唇が下に下がってゆく。

 『あぁ、今夜もか……』

 竜斗は落胆した。『いっそたたなきゃいいのに……』

 そう息子を叱咤したが、雄斗のフェラのテクにそんなの不可能な相談だった。 雄斗がソファに竜を押し倒すと慌てて竜斗は身体を起そうとする。

 「ごめん、ちょっと疲れていて……」

 竜はそういって身を捩って雄斗の唇を外そうとする。

 「いいんだよ。お前はそのままで何もしなくていい」

 「よくないよ」

 「じゃあ、疲れてるだけじゃないのか?やりたくない理由は?」

 雄斗の顔を見ると真顔で怒っている。違う、違うこんなはずじゃなかった。 こんなつもりで雄斗を抱きたいなんて言った覚えはなかったのだけど、 なんて説明したら誤解なく解ってもらえるだろうか?


 NEXT  WORK TOP