友達を彼氏にする法則 





 不思議な事だと思うのだけれど、 世の中の多くの人が同じ事を疑問に思っているらしく、僕がバイだというと皆同じ事を聞いてくる。
 『ゲイはどこで相手を見つけるのか?』
 今ならネットの画像付き掲示板やら、ちゃっとやらいろいろあるだろう。
 それは身体の関係だけ望めば発展場だろうがパートナーをじっくり捜すのはやはり夜の店が多い。
 やはり勤めてる男が自然に集まるのが飲み屋だからだろうか?
 一番の理由は、じっくりその人と形を見極められるということかもしれない。
 とはいえ、実はこういった男達が集まる飲み屋にも色々な種類がある。
 ゲイかバイかノンケかはともかく男しか入れない会員制のゲイバーが一番有名かもしれない。
 しかしながら僕とアイツ…二宮が良く待ち合わせるのは『隗(かい』という名の女性もOKの ゲイパブだ。
 知らない人もいるだろうが、なんと最近の女はなぜかゲイが大好きらしい。だからその店はいつも女で賑わっている。
 そんな女を「おなべ」とか「やおい」とかいうのだが僕もアイツもそんな事にはなんの興味もない。
 じゃあどうしてゲイやバイを自覚する僕達がこんな店を利用するのかといえば、そんな店には ノンケと呼ばれる男に興味のない男達がその女たちに惹かれて集まってくるからに他ならない。
 実際のところ僕の相棒の二宮星蓮(にのみやせいれん)はノンケが大好物なのだ。
 二宮は好みのイケメンを瞳の端に入れつつ大きくため息をついた。
 「あ〜あ、ひゆ!あんないい男がどうして女に走ると思う?」
 「仕方ないよ。それが自然なんだから」
 「ちぇっ!そんな事いってお前はいいよな。いい男だから、黙っていても女が寄ってきて、それに群がるようにノンケもよってくるもんな」
 「でも、僕は興味ない」
 「興味ない?興味ないってノンケは嫌いなのか?」
 「別に嫌いじゃ無いけどいろいろ面倒だ」
 そうなのだ。それは、半分は当たっている。
 僕は面倒なのが大嫌いだった。
 そんなに努力しなくてもそこそこの男や女は向こうから寄ってきたし、もともと淡白だったから。
 だけど、そんな僕がどうしてこのパブに入り浸っているかと言うと、すべては二宮のせいなのだ。
 自分でも愚かしいと思うけれど僕はこいつに片思いしてる。二宮の我が儘はついつい聞いてしまうのは僕が二宮に惚れた弱味だろう。
 そう、僕は二宮に淡い恋心を抱いていた。二宮と僕は同じ大学でゼミこそ違うけどずっと一緒の学生時代を過ごし、今でもこうして事あるごとに酒を酌み交わす仲だ。
 さっぱりした顔立ちにサッカーをやって日焼けしたその顔はいかにもスポーツマンタイプの二宮とインドア派で男としてはどうしても華奢なタイプに入る僕とはあまり共通点もなかったのだが、大学時代の早い時期にばったりとゲイパブで鉢合わせして意気投合してから、僕らはずっと親友に近いセフレという関係を保ってきた。そう実は僕達身体の関係だけはある。
 僕は女もいけるから特別処理に困らないが、どうやら二宮は、ゲイ…つまりこっちの人間とそういう関係になって泥沼になるのを怖れていた。 だからといって性欲処理は健全な青年男子には必要なわけで。
 一番後腐れの無さそうな女もいける僕がセフレとして抜てきされたらしい。
そんな消極的な理由で選ばれたにしても、僕の方は二宮の近くで触れられる立場にいるだけで幸せ……そんな乙女な自分が思わず可愛いなと思ってしまう。
 「なあ、あの女をなんとかするとあの男もついてくるかな?」
 僕が二宮の顎の指す方に目をむけるとそこにはスタンドカラーのシャツに真っ黒な長いジャケットを羽織った 男がいた。
 まるでその姿はぺんぎんみたいだと僕は思わず苦笑する。
 顔は良く見えないが、どうも自信過剰なタイプでいけすかないというのが僕の第一印象だった。
 女は少し派手な巻き毛の茶髪で化粧はその割に大人しめだった。
 色っぽい感じが僕の守備範囲だ。
 大きな胸と厚い色っぽい唇を見て俺は充分いけそうだなと思っていた。
 無論、二宮に頼まれると断れない。
 僕は二人の間に入ると「カップルで来てるの?」 と軽く声をかけた。
 「違うの、一人で来るのが怖かったから、友達についてきてもらったの」
 女のこういった甘ったるい声に反応するノンケは多いが僕はどっちかというと勘弁してくれ っていう感じだった。
 「あなたは男と?」
 「まぁね。ここは一応ゲイパブだから」
 「おんなが入ってくるのは嫌なんでしょう?」
 「そんなことないよ。僕はバイだからね」
 「ほんとに〜〜?あの一緒にいた人がもしかして恋人?」
 だったらいいけどね。
 僕はそうなりたいと思っているけど二宮はノンケ専門だからな。
 「残念ながらただの友達だよ。君の名前は?」
 女は満更じゃないという笑顔を僕に向けた。どうやら僕は彼女の守備範囲だったらしい。
 「りな……あなたは?」
 彼女の頬の近くに唇を寄せて囁く。
 「ひゆっていうんだ」
 背後からいきなり肩を強く後ろに引かれる衝撃があった。
 りなという女の友達らしい色黒の逞しい男が僕の肩を乱暴に引いたらしい。
 多分何かアウトドアのスポーツでもやっているのだろう。体育会系の筋肉のいい感じの付き方だ。
 僕は趣味じゃないが多分二宮はど真ん中ってやつなんだろう。
 そう思うと何か胸に苦いようなものが拡がっていく。
 「ここは、ゲイバーなんだろ?何、女に構ってるんだよ」
 その男は真っ赤な顔で怒っている。だがカップルを自認するのは彼の独り善がりだったらしい。
 「天野くん、やめてよ。この人たちと私達のノリは女の子同士なんだもん。ね!」
 りなは、そんな風に僕に同意を求めて逆に僕の腕をとって纏わリつく。
 女のそんな仕種は決して嫌いじゃないのだけれど。
 でも、今の僕は二宮が必死になって「ぼくらはこっちにいこ?」と 天野と呼ばれたノンケの男を慰めている方が気になった。
 たとえ二宮がどれほどその気になろうと きっといつもみたいに、『ここにくる女の子の話題の提供のためにちょっとそれっぽいことしてみない?』 なんて直球の誘い方をしてノンケの男達にキモがられ酷い目にあわされて戻ってくるのがオチだろうが。
 そう、実は情けない事にそれがなにより僕が待ち望んでいる瞬間だ。
 二宮がノンケにモーションをかけて手酷く振られ、その傷ついた心を僕の身体で優しく宥める。
 ぶちあけてしまえば、僕達はここのところずっと他の誰とも寝ていないような密度の濃い最高の肉体関係は続いてる。
 相性は抜群。朝までそれこそ野生の獣のように彫刻のような見事な身体を妖しくしならせ声が出なくなるほど乱れる彼を僕が優しく制御する。
 なんという至福……
 しかも彼の中はうっとりするほど熱くて締まりは最高、しかも今まで経験したどの女よりフェラも上手かった。
 「ひゆ……感じる?」
 「ん……すごいな」
 「女より?」
 「あぁ、女より男の方がフェラは絶対うまいものな」
 二宮がそういうと喜ぶのを僕は知っていた。
 ノンケ相手にフェラだってあり得ないのに。
 それでも二宮は夢を見ている……そんな彼の思いが切なかった。
 僕らは、全てを忘れるように激しく求めあい 朝まで睦みあうのだ。
 うっすらと筋肉のついた二宮の美しい肉体が、まるで僕らが愛しあう恋人達でも あるかのように錯覚させられそうになる。
 ただ、残念ながらそれに二宮の心は全く伴ってはいなかったけれど……無論僕を除いて。
 好きな男を慰めながら身体を重ねる……しかも二宮はノンケしか好きにならないから、僕以外の男と どうにかなるなんてあり得なかった。
 そういう意味では僕らは互いに他の誰とも身体を重ねないというのがずっと暗黙の了解として横たわり僕もそれに甘んじていた。
 実際、僕の愛撫に二宮は照れながらも応え、最後には乱れて僕にしがみつき、そして囁くのだ……愛していると……それが僕にとっての最高の……まさに今まで生きてきてよかったとも思える瞬間だったけれど……それはまるでついには彼が本当に僕に恋してしまったかのように。
 だが、すぐに僕は現実に引き戻される。
 身体の欲求が満たされれば、僕などもう用なしだ。ただ秘密を共有しあう血兄弟だとでも思っているんだろう。
 気がつけば二宮は何かを訴えるような切ない瞳で天野を見つめている。
 決して実らない恋なのに。
 僕には見せた事もない熱い視線を送ってもノンケの天野は靡くはずもないのに。
 もし天野が、僕を裏切ったら一夜を共にするとでも囁かれたのなら、間違いなく僕を切り捨てるであろう彼だから。
 そんな瞳でいくら見つめたって報われやしないのに。
 ……それは俺にとっても同じ事、どれほど二宮が好きだって俺に振り向いてくれる訳じゃない。
 それなのに同じような射るような視線を二宮に浴びせているのだろう。
 そうだ、僕は彼の好きなノンケじゃないからいくら肉体関係が深まろうともそれだけの関係だと彼は安心しているのだ。
 俺と身体を重ねてるのだってただ、女ともつきあっていた俺が少しだけノンケに近いからだ。それにバイならゲイと違って女とだってできるから、本気にならなくていい。
 だから、二宮は僕にとって男は自分だけでいいと信じているし、時々男と話してもちっともかまわないくせに女の事には敏感で「他の女と寝るなよ」なんてまるで嫉妬でもしてくれているのではないかと錯覚させられる。すぐにそんなのは僕の都合のいい勘違いにすぎないと何度も思い知らされるのに。
 どうやら、二宮は天野に本気になってしまったらしい。こっそり天野を付け回して居所を探ったり、何日か「隗』に顔を見せないと僕に電話をかけさせる。
 ……そう、女友達りなに電話をかけて呼び出すのだ。
 りなが『隗』に飲みにくれば心配した天野が必ず付き添ってくるのを知っていて。
 それでも二宮は諦めない。
 りなに邪険にされて傷つく天野を優しく慰めている。僕達のベクトルは常に一方通行だ。二宮は天野に。
 天野はりなに。りなは僕に。そして僕は二宮に……。
 こんな不安定な関係をいったいいつまで続けていけばいいのだろう?
 「ねぇ、私達がくっついちゃったら、あの二人いい感じになるかも」
 りなが僕の耳許でくすくす笑いながら囁く。
 「二人で抜け出さない?」
 それはりなが僕を誘う口実に過ぎない事を僕だってちゃんとわかってる。
 でも、もう僕だって限界なんだ。
 どれほど邪険にされても必死に天野に機嫌をとる二宮を見ているのが。
 僕は二宮に何も言わずにりなと二人で店を出た。
 当然のようにその後、しきりにりなが、どこかに連れていけと誘ってきたが僕は金の持ち合わせがないと断る。好きでもない女の為に鐚一文出したくないっていうのが正直なところで。
 「なによ、仕方ないわね。ホテルのラウンジで飲まない?私が出すわ」
 そういって彼女が誘うのを「部屋に来いよ」と直球で返した。 正直、もうどうとでもなれと自暴自棄になっていて。
 ただ、心のどこかに二宮が追ってきてくれないかと思ったのだけど。
 当然、追ってくるはずもなくて……結局僕は、りなとの爛れた関係に埋もれていった。
 幾日たったのだろう。
 あの後全く連絡も寄越さなかった癖に二宮がりなとの情事の真っ最中に 合鍵を使っていつものつもりドアを開けて入ってきたのだ。入り口で固まってる二宮を僕はできるだけ不機嫌な顔で睨み上げた。
 「ノックくらいしたらどうだ?」
 「そっちこそ何をやってるんだよ」
 困った顔をしながらも二宮はちっとも帰る素振りすら見せない。その様子をみて僕の方が苛ついた。
 「この状態見たら普通、帰れよ」
 「俺が帰るのか?その女じゃなくて?」
 尚も食い下がる 二宮の身体を僕は無言でマンションの外に押し出して鍵をかけチェーンまでかけた。
 「いいの?」
 りながバスタオルで身を包みながらにやついた表情で尋ねる。その勝ち誇ったような彼女の言い種に僕は無性に腹を立てた。
 だけど彼女が悪い訳じゃなくて一番悪いのは僕に違いないのに。
 どれほどかの時間、どんどんとドアを叩いていた二宮も この寒空にその身が冷え込んだのだろう、一時間もするとドアの前から微かに立ち去る気配がありさすがに諦めたようだ。
 これでよかったんだ。
 二宮が外にいないのを確認してから「どうしてあたしも?」と嫌がるりなも無理矢理僕の部屋から追い出して再び鍵をかける。
 僕の心はぐしゃぐしゃに丸められた紙屑のようにひしゃげていた。
 その夜からどんなに二宮が話し掛けても避けまくりで、会っても無視無視、無視を決め込み。
 だって二宮と顔を合わせたら、声をかけたら、ほだされてしまう。どんなに後で辛くても身体を重ねる事を 拒むなんてできない。
 それならいっそ嫌われた方がいいのだ。
 「なんで避けてるのさ」
 そういって僕の肩を掴んだ事もあったが僕はその腕を嫌がり振払った。
 「怒ってるのは俺の方だぞ、勝手に女なんかとできやがって、もうあの女を僕らのベッドに入れるなよ」
 「僕らのベッド?」
 「だってそうだろ。俺だって誰とも寝てないのに、どうして女なんか部屋に入れるんだ。だからバイは嫌いなんだよ」
 バイじゃなくてノンケ以外は興味もない癖に。そう思うと無性に腹がたった。諦めていたはずなのに、納得していたはずなのに、この未練はいったいなんなのか?
 「嫌いで結構」
 「え?」
 「嫌いになってくれて結構って言ったんだ」
 「おい!いいかげんにしろよ。俺はひゆ以外誰とも寝てないだろ?」
 「お前も誰かと寝ればいいじゃないか」
 「なにをいいやがる。冗談じゃない。お前は身持ちが固いと思ったから、だから俺だってお前とだけ寝てるんだぞ」
 「そういうのは、セフレって言わないんだ。恋人っていうんだよ。今の僕達の関係が不自然なんだ。 恋人でもないのに、あれこれ僕の事を干渉されるのはまっぴらなんだ。 悪いが、部屋にいきなり来るのもやめてくれ」
 「どうして?いいじゃないか、俺達友達としてもセフレとしても最高だったろ?ひゆさえ他のやつと寝なければ僕達ずっと上手くいっていたじゃないか」
 二宮……お前って残酷だ。自分が僕に僅かな愛情さえないから、そんな事がいえるんだ。
 「あの、女に惚れたのかよ」
 「あぁ」
 「だからあんな女に操をたてるのか?」
 「そうだよ」
 そのとたん、真っ赤な顔に変化した二宮にぐっと胸ぐらを捕まえられて締め上げられる。
 「お前は、お前だけには僕の気持ちを分かってもらえると思ったのに」
 わかっているさ、だから辛いんだ。お前がノンケしか関心がないって事も。
 俺ならバイだから、泥沼にならずに軽いセフレでしかもセィフティセックスができる相手だと思ってる事も。
 それなのに、どうしてお前がそんな傷ついた顔をする?
 ずるい、ずるいよ。
 「お前は失恋した天野を慰めてやればいいじゃないか。お前ならそんなに男っぽくもないから、もしかしたら、自暴自棄になった天野が一度くらい相手をしてくれるかもしれないぜ?」
 僕はなるべくなんでもないような表情を取り繕ってにやりと笑ってやった。
 「お前はそれでいいのかよ?」
 「は?」
 「お前は俺が他の男と寝て平気なのかよ?」
 平気なわけない……だけどそんな事にお前が関心があったためしもないのに今さらだ。
 「俺は、お前以外の男と寝たいなんて思った事一度だってないぞ!寝た事もないし」
 …?いったい二宮は何を言い出すんだろう?
 「第一俺は天野と寝たいなんて言った憶えはないぞ」
 「二宮……今さら何を言ってるんだ?僕がバイな事も、お前がノンケが専門な事も互いに了承済みだろう? 僕が、あの女と寝たってお前に感謝されこそすれ、こんなふうにお前に喧嘩をふっかけられる 事は何もしてないはずだ。チャンスだってさっきもいったろ?天野は俺のおかげでりなに捨てられて自暴自棄になってるから」
 「それが、なんだよ?お前がはじめての相手で他のやつと寝た事も寝たいと思った事もなかったっていってるだろ?だけど、お前はバイだし、その…俺だけそう思ってるのは癪だったから」
 やっぱり、二宮の意図が解らない……僕は現実味の無いような信じられない気持ちで呆然としていた。
 「こんな俺にずっと優しくしてくれるからもしかしたら、お前も俺の事好きなのかと思った。 だけどバイのお前に夢中になったりしたら、女に関心が戻ったらお前に捨てられそうだから、ノンケが好みだって言っていたんだ。それなのに、お前、あっさり女とできちゃって、それでも身体の関係だけでも続けられたらって思い込もうとしてるのに女にあんなに甘いのに俺には徹底的に冷たくしやがって!」
 いったい二宮は何を言っているのか?きっと僕が女に関心を示して冷たくしたから、急に僕に対して子供っぽい独占欲でも感じはじめたとでもいうのだろうけれど。
 「何言ってるんだよ!みんなお前が望んだ事だろ?俺はお前の為に好きでもない女の関心をこっちに向けて天野と仲良くできるチャンスを作ってやったんじゃないか」
 「俺のせいかよ」
 まさに逆切れだ。
 「そうさ、それに男同士で何が気楽だって、互いに干渉しあわないで身体を重ねる事ができることじゃないのか?」
 「俺は違う」
 「違う?」
 「俺は他のやつとはしてないぞ、するつもりもない」
 「そんなセリフはな、恋人にいってやれ」
 だけどそんなの永遠に無理か?本物のノンケしか好きになれないのなら。
 「好きって言えば俺とだけしてくれるのかよ。他のやつとしないでくれるのかよ」
 俺にずっとお前の子守りをしろとでもいうつもりなのか?
 「言葉だけなんて意味ないね」
 それこそ生殺しだ。
 「身体もだろ?」
 「心がなければ、そんなの誰とだって……」
 「お前が、他のやつに優しくするのを見るのはもう嫌なんだ。セックスしてると思うと 胸が苦しいんだ。こんな気持ちは天野にだって感じた事無いよ」
 やめてくれ!
 そんな言葉を聞いたら僕は誤解したくなる。
 「いいかげんにしろ」
 「俺に冷たくするなよ。やさしくしろよ。身体を合わせてる時は優しいじゃないか。 お前が女の方がいいっていうなら、俺、我慢する。せめてあの時だけは優しくしてくれよ」
 「ばかか、お前は……」
 ばかだけど愛おしい…そんな大バカ野郎だ…おまえってやつは。
 「ひゆがいないと…俺は俺はだめなんだよ」
 僕は二宮の肩の上で震える僕の手をそっと二宮の肩に落とした。
 跳ねたように見上げる二宮の唇に自分の唇をそっと重ねる。
 啄むように二宮の唇が僕の下唇を挟んで角度を変えてキスをしてきて。
 今後は僕の方から彼の唇を貪った。
 「だけどひゆは女の方が本当はいいんだろ?」
 躊躇いがちに尋ねる二宮に「お前がいいんだよ」そういって僕は強く抱き締め、そういいながらなぜか 目頭が熱くなるから涙がこぼれないように上ばかり見ていた。
 FIN

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