遥か日輪の彼方に

ハロウィン番外2


 実際のところ、その北欧出身の女優の身長も180cmに迫るものがあったと思うが、いかんせん城の身長が 低過ぎる。自称170cmなんて言ってはいるが、どうみても165cmそこそこ。下手をすれば162〜3cmくらいかもしれない。

 彼の整い過ぎた顔と凝った衣装が、等身大の小悪魔フィギュアがそこに立っているようで、一瞬のどよめきが拡がる。

 『やっぱり城は綺麗だ』と志月も自分の恋人だということすら忘れて見入ってしまった。

 「紹介するよ。今度、我が社のCMに出演が決まったカレン・ターナーさんだ。日本語も勉強中なんだ。今夜は志月がパーティをやるから彼女との会食をキャンセルしようと思って謝ったんだよ。そうしたら彼女も一緒に来てみたいっていうから 連れてきたんだけど迷惑だった?」

 有名女優を連れてきてくれたことは迷惑なはずはないけれど、城が彼女をエスコートしてきたのが、志月は正直面白くなかった。だからといってそれを顔に出すほど愚かでもなかったが。

 「ヨロシクゥ、カレントモウシマス」

 辺りの注目を一身に集めているのは、志月もわかったが、下手な英語で恥をかくのも嫌だった。

 「こちらこそ、村上志月、ここのオーナーです。どうぞ楽しんでいってください」

 志月の日本語を背後にいた通訳がすかさず訳して彼女の耳許で囁いている。 居心地が悪くて志月は結局、すぐにその場を立ち去ろうとした。だがいきなり背後から腕を掴まれる。

 「志月、君の従業員を僕に紹介してくれないつもりかい?」

 「いえ、そんなことは」

 そういいながらも、一瞬躊躇した志月を城は見逃さなかった。

 「別にいやならいいんだ」

 駄々っ子のようにぷいっと横を向くと城はそのまま人込みに消えそうになる。

 「待って、違いますよ。だけど心の準備が」

 「心の準備って?」

 と柳眉を逆立てる。

 「ここには、なぜか最近各界の著名人がお忍びで集まっているんですよ。お仕事に障るんじゃないかと」

 「誰の?」

 「もちろん、あなたのに決まってるじゃないですか」

 そこで城はくくくっとさも可笑しそうに笑い出した。

 「わかった、わかった。志月を虐めて後で、いじけられたら困るのは僕だからね、いいよ今夜は」

 志月はほっとしてそっと城の指を掴む。城もぐっと握り返してくる。 思わず顔を合わせてにっこりと微笑みあった。

 Spookyな音楽が鳴る中、仮面をつけた城と志月は誰に憚ることなく堂々と手を繋いでいた。

 無論、たがいに今夜の事は自分の方が相手に合わせたのだから、きっとベッドの中では いいことがあるだろうと勝手に自分の都合のいい思い違いをしながら。

 

Fin 

 

  その夜の二人は、NEXTボタンを押してね。

 BACK  WORK TOP NEXT