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Get memories out of mind 7 |
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あの後、俺は情けないことに東海林に抱きかかえられて保健室に連れていかれたらしい。 らしいっていうのは、俺はそのままお母さんが迎えに着て車に乗せられるまで記憶が曖昧だからだ。 気を失う?おんなのこじゃあるまいに……こんなに恥ずかしい事って本当に久々だ。 小学校の時、遊んでいて興奮してお漏らししちゃった時以来だ。 あれが俺の一生の汚点だって思っていたけど、長く生きてりゃ色んな事を経験するらしい。 も〜〜〜やだ。 俺は全ての記憶から沢田という文字を消したいと思っていた。それなのに何の因果かそんな矢先に今朝こいつと同じ車に乗ってるのだ。なんという運命の皮肉……なんてかっこつけてられねーけどな。 沢田、頼むからお母さんにあの事をしゃべるなよ。しゃべったらぶち殺す……ような酷い目に合わせちゃうんだからな。まだ具体的には考えてないけど、滅茶苦茶恥ずかしい事だぞ。 沢田はなぜか、一言も口を聞かずにそのまま校門前で降りて俺のお母さんに丁寧に挨拶した。 なるほどこうやって挨拶すれば、大人に受けがいいのか……なんて俺はぼんやり考えながら 沢田の後をついて生徒玄関をなんとか時間前に通り抜け廊下に出た。 なにげに横を見ると沢田がガラス玉のような大きな瞳をぐりっと俺に向けた。ひぇ〜な、なんだよ。びっくりさせんなよ。心臓に悪いじゃね〜か。 「結菜と付き合ってるのか?」 俺は誤解だといわんばかりにぶるぶると首を振る。これ以上勘違いな嫉妬をされてエッチな事を されるなんて冗談じゃなかった。いや、エッチは嫌じゃなかったりするんだけどさ。俺の微かに残ったプライドをこれ以上粉砕してほしくなかったりするわけで……。 「まぁいい。後でゆっくり聞くさ」 謎めいた言葉を残し沢田はA組に入ってゆく。俺は授業を受けてる間ひどく落ち着かなかった。 こんな事なら、いっそ遅刻した方がましだった。 そうつぶやきながら、放課後美術準備室に向う。 ちょうど、授業の後始末を終えたA組のやつ等が出てくるのがみえた。 ちょっとだけ沢田がいないか期待して目を泳がせてる俺って結構乙女だったりするよな。か〜っ!なさけね〜。 ところが驚いた事にばっちり目があったのは結菜ちゃんの方だった。 結菜ちゃんは俺をみて微かに微笑む。一ヶ月前の俺なら天にも昇る気持ちだったに違いないのだ。 でも、今日はなんだか気まずい。軽く会釈して立ち去ろうとすると結菜ちゃんの声が俺の背中を追って来た。 「古城クン、今何を描いてるの?」 「え?静物です。あとはデッサンかな」 「人物なんか描かないの?」 「どっちかというと静物が好きなんです」 「古城クンの人物画を見てみたいな」 「え?」 「古城クンの絵が好きなんだ。描いてるところも……」 俺は思わず辺りを見回した。あぁ沢田に聞かれてなきゃいいけど。 「グランドからね。毎日古城クンがデッサンしてる姿がみえるんだ」 「そうなんだ……」 もう、美術室には誰も残っていないようだった。俺は少しだけ安心して結菜ちゃんの話に付き合う事にした。だってこんな機会ニ度とないかもしれないもんな。 「私、文化部って軟弱っていうイメージがあったんだけど。ボールを拾ってる時にみた近くでデッサンする古城クンの横顔がびっくりするほど真剣で、それが夕日に反射してすごくいいなと思ったの」 「そうかな?」 「実はそれから時々、こっそり古城クンを見ていたんだ。知らなかったでしょ?」 「うん」 「もし、よかったら私が古城クンの最初の人物画のモデルになりたいな……なんて」 「いいよ」 「え?ほんと?」 「いいよ。ただし沢田くんと2ショットならね」 どうして俺の口からそんな台詞がでたのか自分でも解らない。 「沢田ってミツルくん?」 「つきあってるんだろ?鈴木さんをモデルになんかして沢田君に誤解されると僕、困るよ」 結菜ちゃんは鈴木結菜っていうんだ。まさか本人を目の前に結菜ちゃんなんて呼べないしな。一応鈴木さんと呼んでおこう。 「ん〜、私達只の従兄弟同志なのね。良く話はするけどそんなんじゃないんだ」 そんな風に思ってるのは結菜ちゃんだけだよ。沢田ったら嫉妬のあまり俺に口にできないような変な事までしたんだぞ。 そんなこと絶対結菜ちゃんには言えないけど。沢田もこんな鈍感娘相手で気の毒だよな。 ……?あ……俺、今完全に沢田の肩をもっていたよな。認めたくないけど、俺、やっぱり沢田の事 ……。 ……最悪……。 こんな可愛い子をモデルにできるって言うのに。 |