追憶の薫り2

Muse over past memories 2(沢田視点) 


 最初となりのクラスであいつを発見した時、絶対別人だと思ったのだ。

 顔は似てるがデッサンする時のきつい瞳はどこにもなく、気の弱そうなおちゃらけた男。

 はっきりいって俺の嫌いな軟弱なタイプだ。後ろからいってどついてやろうか……。

 あんな男に少しでも恋心を抱いた自分が嫌になった。

 ふとなにげなく教室の中で回りから入ってくる雑音……いつもは単語を暗記してるから聞こえてこないのだが,あの時だけはなぜか違った。

 クラスでマドンナなどと持ち上げられてる女……なぜかこいつは俺の遠い親戚とかで 何かと言うと話しかけてくるウザイやつなのだが、そいつが友人と話しているのが 耳に入ってきた。

 「結菜って沢田の事が好きなの?」

 「違うよ。充とはハトコなだけなの」

 「じゃあ、となりのクラスの古城と付き合ってるって本当?」

 「ふふふ。まだ付き合ってないよ。でもなんかタイプかもしれない」

 「え〜〜あいつ、なんか軟弱そうじゃない?」

 「それがね。この前部活でグランドから古城君がスケッチしてる姿を偶然見ちゃって…… 別人なのよ〜。夕日が当った横顔すごくいけてるんだ。いつもとギャップが大きくて惚れちゃいそう」

 俺はびくっとした。古城……やっぱりあいつとなりのクラスの古城か……。

 「結菜なら絶対落ちない男なんていないって……好きって言ってれば 向こうからアプローチあるかもよ」

 「そうかなぁ」

 「そうだよ、絶対!」

 無責任な友人の応援に結菜のやつ満更でもなさそうな顔だ。

 俺は無性に腹が立ってきた。こんな女と古城を付き合わせたくない。だけどそんな俺の思惑とは別に 間違いなく古城は結菜のものになってしまうだろう。ウザイと思いながらも俺は結菜の事が嫌いになれなかった。可愛い顔はしてるが、意外に男っぽい性格のさっぱりしたいい奴だと気に入っていた。

 古城もそんな結菜を知ればもっと彼女が好きになるだろう。

 そんなの俺にとっては絶対に許せない事だった。一度は諦めた恋心もまた、熱く息吹を吹き返したのだ。

 たとえ古城に嫌われても憎まれても古城を結菜に渡さない、渡したくなんかなかった。

 彼を俺だけのものにしたい。心は無理なら身体だけでも……。

 普段、隣のクラスを何げに観察していると古城はB組の東海林と妙に仲がいい。

 俺の観察によると東海林のやつ、古城の事をただの友人を通り越して好きなのかもしれない。なんたって古城にべたべたさわり過ぎる。

 スキンシップって言っても中学生じゃないから、あれは絶対やりすぎだ。 古城も何を考えてるんだ。黙って男に腰回りを触らせてるんじゃねーぞ。あいつの触り方には絶対 下心がある。下心がある俺がいうんだから先ず、間違いない。

 あぁ!そんなにがっちり古城を引きよせやがって、密着しすぎなんだよ。俺の古城に何をしやがる。

 俺は本気で腹を立てていた。古城ってばなんて無防備なんだ。そんなにべたべた触られてるのににこにこしてるんじゃねーよ。

 隣のB組を覗けばイライラするのは解り切ってるのに、俺はついついB組の様子を瞳の端に映してしまうのだ。

 俺の怒りとイライラは限度を超えかけていた。

 イライラしながらふと前を見ると普段俺達が使わない4階に古城が向かっているのが見える。

 俺は何も考えずつい古城の跡をつけていた。

 4階の郷土資料室に用があったらしい。このまますれ違ったら俺はしらんぷりしてそのまま帰ろうとした。

 ところが振り向くともう、古城がいない。まさかあいつ人気のない4階のトイレに入ったわけじゃねーよな? あそこは上級生がたまに煙草を吸ってる場所だ。

 俺がトイレに駆け込むと案の定個室に連れ込まれそうになっている。あ〜ぁ、ばっかじゃねーの? そのまま放って置いたら何をされるか解らない。

 多少は危機感のうすい古城にとっていい薬になるだろうが、見たからにはそのままにしておけなかった。

 まぁ心の奥にチャンスと思った事は否定しない。このまま俺のものにしてしまうのもありかなと 思いながら、俺はトイレに足を踏み入れた。  

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