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Father's Day |
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「明日は予定入れんなよ」 いきなり雄斗がそんなことをいう。 ふ〜〜んどういう風のふきまわし?そんなこというなんて。 明日は誕生日じゃないし。おれたちの記念日なんて絶対覚えてる訳無いし。もし俺が 今日出会った記念日だよね?なんて言おうものなら、冷たい軽蔑の眼差しをたっぷりと浴びるに違い無い。 何かな? ちょっぴり楽しみで少し不安。だけどまた、変な友達だけは連れてくるのは勘弁してくれ。 15日当日、雄斗は少しだけお洒落して出かける素振りだ。 俺も慌てて支度をする。昼までに帰ってくるのかな?だったらお昼の用意をしなくちゃ。 はっ まずい、今の俺って意識が完全に主婦化してきてなかった? さっさと出かけよう。 エンジンスターターのお蔭で車内はクーラーが効いて少し肌寒いくらいだ。 「どこに向いましょう?旦那さま」 ちょっとだけふざけた感じで俺が車を発車させる。 「う〜〜ん。じゃあ小熊座」 なんかジョークがベタなんですけど。 「映画館ならオリオン座に行こう?今、話題のSFやってるし」 取りあえず、自分の観たいのをいってみる。滅多に外に二人で出かける事なんかないから 雄斗が機嫌がいいなら本当はどこでもいいという俺は極めて消極的態度だ。 「いいよ、どこでも」 う〜ん、これは良い徴候だ。機嫌がいいというサイン。でもいつ機嫌が悪くなるか解らないから 結構雄斗とのデートって緊張する。 一緒に暮らして解った事。雄斗は意外と勉強家だった。家に帰ると遅くまで 仕事の資料作りか専門書を読んでいる。 毎日柔軟体操とストレッチを欠かさないのはさすがスポーツマンだ。 テレビはスポーツ観戦かニュース。AETが来るからと英会話もやってる。 俺は雄斗がもっと軽いやつだと思っていたから、ちょっと驚いた。 だから一応教師にもなれたのかと妙な納得をしてしまう。 俺は暇があると雄斗の身の回りの事をしてしまうんだ。気にしなければいいのだが、 やっぱり気になる。結局家事の殆どは俺。まぁ馴れたけどね。 雄斗は家事は嫌いなくせに、一緒に風呂に入りたがり俺の身体を洗いたがる。 そしてついついHな方向へ。まぁ、週1から週2位だからまぁいいけど。 そうそう話は戻って結局映画館の後、買い物にも付き合ってくれて、服も選んだり楽しかった。 何を聞いても、「いいんじゃないの」とか「どっちも似合うよ」 なんて関心がないのはみえみえだけど。 実は雄斗に内緒で雄斗用のシャツやパンツも買った。実はちょっと高い。 どうせ、雄斗は服に関心がないから、俺が買ったものを素直に着ている。 俺の好みに合って良い傾向だ。 そのあとなんと、最近出来た中華料理店に行こうと誘ってくれたのに驚いた。 「竜って新しい店とか好きでしょ?」 「ミーハーだと思ってるんだろ?」 「いや、芸術に造詣が深いと思ってるよ」 ほんとかよ?まぁいいや。 店の中で若い女の子達が俺達をみて逆ナンを仕掛けてくる。 からかってやろうかと思ったら、 「ごめん、俺達ちょっと大事な話をしてるんで……」 雄斗がやんわり断ってくれた。雄斗好みの美人だったのに。 どうなってるんだ?今日の雄斗は絶対おかしい。 俺に気を使ってる。たしかに俺に気を使ってくれてる。 これってもしかして、本当の意味で俺達が両思いになったのだろうか? 部屋に帰ってドアを閉めるなり、雄斗はキスを仕掛けてきた。 「ユウ……」 腕を肩に回しながら耳許にそっと呟く。 「今日はありがとう。楽しかった。でも今日は何かの日とか 特別な日じゃないよね?」 雄斗は怪訝そうな顔をする。 「今日は父の日だろう。」 「だから?」 「いつも竜にはお世話になっていて感謝の気持ちだよ」 嫌な予感がよぎる。 「母の日なら怒るだろう?」 俺は、遠慮せずにぐ〜で殴った。 「ふざけんな」 雄斗は訳がわからないという顔だ。 俺は雄斗みたいなやつをどうしてこんなに好きになってしまったんだろう。 情けなくて仕方ない。でもせっかくだから父の日をたっぷり堪能させてもおらおうか。 今夜は俺がお父さんだから。 |