不思議な出会いもあるものだ。....と元木祐也はその時初めて感じた。
元木達総勢7名は同じ事務所の女の子ともっと仲良くなるために最近出来たばかりの市営リンクにやってきた。勿論男達の下心はいっぱいで、今にも溢れだしそうだ。
もちろん元木の予定としては女の子をエスコートしていいところを見せ、その上、スキンシップもはかろうと思っていたのだ。
ところが予想に反して彼女達は自分よりよっぽどスケートがうまい。
『ちぇ、反則だよな、長野出身だなんて....。長野の小学校の冬の体育はスケートだったんだろ?』
それでも、運動神経に多少の心得のある自分としては、ここでいいところを見せておかないと
と無理して彼女達を追いこした。
そしてくるりとターンしてみせたとたん、バランスをくずしてもんどりをうつように倒れかける。
.....まずい頭から落ちる....。
そう、思った瞬間、力強い手が自分の腰を抱き上げた。
元木は一瞬何が起きたのか把握できずにその場にへたり込んでしまった。
周りを見回すと女の子達が心配そうに覗き込んでいる。
一瞬の間の後、きゃっきゃと笑われた。
「元木さん、大丈夫〜?」
「だけど、元木さんったら、あんまりらしくって笑っちゃうわよね〜?」
「....いってぇ〜。らしいってなんだよ。らしいって」
倒れかけただけなのだからどこも打ってないが、心臓が飛び出しそうだ。
「何いってんのよ。転んでないんだもの痛いわけないじゃない。
可愛らしいのらしいに決まってンじゃないの」
彼女達はさも楽しそうにくすくす笑っている。
「でも、カッコよかったわね。さっきの彼。元木さんを抱き上げてそのままノンストップ。もしかしてスケートの選手?」
女の子達の関心はすっかり、元木を抱き上げた男に向いている。
あ〜、ついてない。その男はどこにいったのか見当もつかなかった。
おかげで元木はお礼をいう暇もなかった。
その上、どんな男なのか、顔も声も知らないのだ。
次の日出社すると早速その元木の間抜けな話題で盛り上がっていた。
しかし、そこに係長が静かに話だした。
「盛り上がってるところ申し訳ないんだけど、ちょっと聞いて。今年の忘年会、うちの事務所は新人がいなくてね。
経費削減で本社と合同でやることになったんだ。
誰か何か受けるやつを考えておいてくれよ」
その話を聞いて元木はどきっとした。
思い出したくもない、去年は元木が新人で女装させられて歌わされたのである。
やんやの喝采を浴びたところまではよかったがその後、
酔っぱらった先輩達にアイドルばりにダミ声をかけられ追い掛けられてひどい目にあったのだ。
服を脱がされそうになって、半べそ状態で逃げ回り、女の子達に助けられたのである。
「可哀想じゃないの。嫌がってるわよ。」
女装だって相当男を下げたと思うのにこれじゃあ、
女の子達からアウトオブ眼中っていうやつだ。
(く〜〜〜っ。やっと入った会社であんまりだよ)
だって、元木は中高一環校の男子高だったのだ。(ためいき)
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