ダイヤモンドダスト番外

僕の調教




「ちょっちょっと、待てよ」

いきなり腰に廻る腕を身を捩りながら放す。 僕は元木祐也。恋人の突然の行動に焦りまくっている。 ここは日曜日の大通りで、若い恋人達が腰に腕をまわしていて、普通ならキスをしてもなんの不思議もない。

たしかに僕達は恋人同志と呼べる関係だ。つまり身体も含めてっていうことで。 僕の恋人は誰もが振り返る程の美人で優しくて、よく気もきく。

但し、恋人が男なのだ。それの何が悪いって?だって僕も男なんだよ。まずいに決まってるだろう。 ところがこの男、森川卓巳さんはそんな事なんとも思っていない。 彼の事、前は心の中で卓巳さんって呼んでいたけど、ふとした拍子に口から出そうになって それから、最近は森川さんって呼ぶようにしてる。そんな僕の苦労も知らないで彼は 街中で異常とも思えるスキンシップを繰り返す。肩を寄せるなんて可愛い方、頬を寄せて来たり お尻を撫で上げたり、どう考えてもセクハラだ。 周囲がどういう眼で僕らをみようとまるでお構い無し。

「僕の瞳には祐也しか入らないから」

 なんて気障な事を平気で口にする。 女の子ならきっとそう言われたら有頂天になるだろう。

 でもね。僕も男、男なんだよ?解ってる? 頼むから人前ではやめってってば。

「本当は嫌がってないでしょ?」

 嫌がってるの、本気で嫌なんだよ。ただでさえ森川さんは目立つのに。 そのくせ森川さんってば女の子からモーションかけられても、あしらい方がうまいんだよな。ちゃんと相手にしてから断ってる。なんか今、すれ違った女の子僕の方をみて意味深に笑われたんですけど。

超〜ショック。

森川さんは基本的に男も女もいけちゃうんだろうに、 なんで俺の事構ってるのかな? 本当は仕事で疲れてるから、土日はできれば部屋でゆっくりしたい。 彼って顔に似合わずアウトドアなんだよな。毎週の様にどこかに行ってる。

 今日はシャツを買ってやると言われて森川さんがよく利用するブティックにやってきた。

 試着してると「似合うよ」といって後ろから抱き締めまた頬を寄せてきた。 鏡の中で妖しく微笑む彼に僕はため息を返す。

 まぁ、いいや。今日のところはあきらめよう。激しく世間とずれた感覚の持ち主だけど、いつか僕がちゃんと調教してやるんだから。

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