本当の事をいうと完全に意識が無くなっていたわけではなかった。
まるで夢の中にいるように意識が浮遊している。
だれかに抱えられて、車に乗った記憶の断片がある。
抱きかかえられたままそっと唇に何かを感じた。
(もしかしたらキスしてるのかもしれない)
そうぼんやり頭に浮かぶがとにかく夢の中のようで
ふわふわして何も考えられない。
天然記念物のような元木はキスの経験しか23才のこの歳になるまで
なかったのだ。
ベットに寝かされて首の周りが楽になる。多分ネクタイをがはずされてるのだろう。
それでも元木には危機感が全くなかった。
とにかく早く眠りにつきたかったのだ。
目覚めてみるとそこは、始めてみる部屋だった。
モスグリーンのカーテンから明かりが洩れている。
元木はとたんに正気に戻りがばっと起き出した。
上半身は何も身に付けてない。
もしかして、下半身も?くらっとしたがどうやらトランクスだけは履いていてほっとする。
人の気配を感じて声をかける。 「あの、僕、昨日御迷惑かけてみたいで....」
「迷惑なんてかけてないですよ。ただ、飲み過ぎたみたいだから、
僕の部屋にきてもらったけど。それに僕、元木さんの住所知らないしね。」
予想どうりキッチンから出てきたのは、森川だった。
でも、昨日と随分様子が違う。艶やかな感じがなかった。
「やだな、そんなにじっと見ないでくださいよ。化粧は昨日の
内に落としたから。」
昨日は美少女に見えた森川も今朝は少し綺麗な普通の青年という感じの印象だ。
そして昨夜の事には何触れない。
こちらから聞いていいものだろうか?
でもなんて聞こう? どうして僕は服をきていないの?昨日キスした?
まさか...........聞ける訳がない。思わず無言で首を振る。
「ホットサンドでよかったら食べる?紅茶はアールグレイでいいかな?」
一応元木に意見は聞いてるようだがもう、すでに食事の用意はすんでいるようだ。
食欲なんかあろうわけもなかった。
どうしてこんな事になってしまったんだろうと思わずため息がでる。
「いきなり部屋から出ない方がいいよ。このマンションは会社
で借りてるから、知ってる人に見られるかも」
森川はどこか楽しそうである
「じゃあ、いつ部屋を出たらいいんですか?昨日どうせ見られたんじゃないの?」
「かもね。僕はかまわないよ。みんなに誤解されても、どうせなら
本当に経験しちゃうのはどうかな?男も女も経験ないでしょ?」
とんでもない男だ。
「君が女だって嫌だよ。」
「スケートリンクでは下心みえみえだったのに?」
本当に失礼な男だ。だけど悔しいが反論できない。
ゆっくりと綺麗な顔が近ついてくる。理性ではいけないと叫んでいるのに。
「目を閉じて」
なぜか元木は目を閉じることができず近付いてくる森川の唇をみつめた。触れるだけのやさしいキス。
電流が体中をかけめぐるようだ。
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