口紅を落とした森川は先ほどのような妖艶なうつくしさはなかったが
それでもつい見愡れる程度の美形であることは間違いなかった。
暫くお互い無言で 只、酒だけがすすんでしまう。
「北海道でずっと過ごされていたんですか?」
特に話す事もないので元木は無難な話をはじめることにした。
2人が最初に入ったのは無国籍料理の店だった。
森川はそれに答えずにじっと元木の瞳をみつめている。
何かまずい事を聴いたのであろうか?先程北海道から来たといったのは
森川自身でなかったか。
「あの......。」 たまらずに元木から声をかけた。ところが
「元木さんって彼女いないでしょ」 いきなり失礼な話題である。
「どういう意味でしょう」 むっとした気持ちを隠せずに切り返す。
「彼氏もいないのかな〜?」
「じゃあ森川さんはいるんですか?彼氏」
「スケートリンクで腰....大丈夫だった?」
元木は絶句する....
頭の中は色々なことがぐるぐるして整理がつかない。
「女装も困っていたんでしょ?どうして
僕が女装したと思っているんですか?」
思わず、くちがぱくぱくしてしまう。金魚じゃないんだからと自分につっこみを入れたくなる
みっともなさに元木はパニックになってしまった。
「か、から、からかってるんですか?」
「どうでしょう?でも、元木さんの女装姿は北海道支部にも
写真がまわってきましたよ。僕、パソコンに保存してあるんですよ」
そして、だめ押しの様に森川は呟いた。
「元木さんて噂以上に可愛いですね。僕、立候補しようかな。
男同士なんて即物的だからな.....まぁ、あんまり深く考えず
僕の身体に興味があったら電話くださいね。僕はどっちもいけるから」
「どっちもって?」
とんでもない言葉が口をつく。聞いてはいけないと思いながら口から出てしまったものは
もう、戻せはしない。
「男も女も受けも攻めも」
森川はそういうとパニックなっている元木の手をぐっと握りしめた。
酒がぐっとまわってくるのを感じた。
そこから悲惨な事に元木の記憶が途切れてしまったのだ。
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