|
kohinoor 9 |
|
まだ、北海道の春は遠い。少しの距離を歩いてるだけなのに、元木の身体は冷えきっていた。 「寒いですか?」 少し元木は震えていたのかもしれない。男はそっと元木の手を握った。 「冷たいな……」 元木は慌てて手を引っ込めた。 「元木さんっておっしゃいましたよね?僕、麻蔵っていいます。僕もここは地元じゃないんですよ」 「そうですか……」 そういいながら、どんどん人気の無い道を行ってるような気がする。 さすがの元木も不安になってきた。 「どこに向かってるんでしたっけ?」 「アイヌの砦跡です。」 「遠いんですか?」 「すぐそこですよ」 麻蔵は森川に似た優しそうな笑顔で元木に笑いかける。 だが、いくら雰囲気が似ていても彼は森川ではない。携帯も持たずにのこのこ 見ず知らずの男についてきた事を後悔しかけていた。 「でもせっかくですけど、なんか僕……急に寒くなって……帰ってもいいですか?」 「ここまで来たのに?」 急に麻蔵の声が冷たくなった。 「こっちへおいでなさい」 麻蔵はぐっと元木を引き寄せるとぐっと強い力で抱き締めた。 「なに……するんですか……」 「寒いっていうから、暖めてあげようと思っただけです」 「よせ……」 腕の中から逃れようとするが、麻蔵の拘束はさらに強くなった。 元木の顎を上に向かせると急速に麻蔵の顔が迫ってくる。 身体を捩ろうとするが、思いのほか強い麻蔵の力に元木の抵抗など意味をなさない。 降ってきた熱い唇に自分の唇を貪られ目眩がしてきた。 『森川さん……卓巳……』 麻蔵の舌が元木の口の中で暴れ回る。 『ちくしょー……みんな卓巳が悪いんだ。こんな街に来るんじゃ無かった』 熱く滾った怒張をぐいぐいと元木に押し付けてくる。 『こんなところで強姦なんかされたら一生森川を恨んでやる』 そう、決心した時だった。 枯れた笹の葉を掻き分けるかさかさという足音が聞こえてきた。 さらなる恐怖が元木の胸を締め付けていた。 |