ダイヤモンドダスト2

kohinoor 4



 「僕は幼い頃からバレエとフィギュアスケートを習っていてね。もう、友人も作らずに それだけっていう生活をしていた。 それなのにジャンプの練習中に足を痛めた僕はこれ以上フィギュアスケートを続ける事ができなくなってしまったんだ。バレエもフィギュアスケートの為にやっていたから、本当にショックで……。どうしようかと 思ったよ。そんな時、父の仕事の関係で紹介してもらった、ある男子校に特別に転入できたんだ」

 「でも、出会った時はすごく上手にスケートを滑っていたじゃないですか?」

 「あれじゃあ、スケートを楽しむことはできても、選手としては問題外なんだ。 笑っちゃうかもしれないけど、僕は真剣にオリンピックを目指していた。親もそれだけの金を かけていたから期待も大きくてさ」

 「フィギュアスケートってそんなにお金がかかるんですか?」

 「う〜んまず、スケート場を借り切るだろ?それに一回2時間2万円くらい。コーチも一対一。 コスチュームもオーダーメイド。僕の実家は商売をして地元じゃ結構お金がある方だったけど、 それでも、親はお金の工面に苦労したみたいだよ」

 「そこで有賀さんに出会ったんですね」

 「色々な事を忘れる為に僕は北海道を離れた。どちらかというと華奢な僕は有賀みたいな 体型の奴に憧れていたんだ。きっと僕も悪かったと思う。いつも有賀を見つめていたから、 思わせぶりだと思ったんだろう」

 短くはない沈黙が二人の間に流れ元木は思わず緊張して手を握りしめた。

 「仮装大会で僕はお姫さまに選ばれた……詳しい役は忘れたな……フィギュアスケートで化粧も馴れていたからそんなに抵抗がなかった。それよりもみんなに注目され、賞賛されるのが嬉しくて仕方なかった。 もともとスポットライトに当たりたいと思っていたんだから」

 「だから、初めて会った時もあんなに化粧が上手だったんだね」

 「う〜〜ん。まぁ、それもあるかな。その直後あれは起こったんだ」

 「あれって有賀さんと出会ったって事」

 「あぁ、彼に呼び出されて付いていったら、その場で強姦されたよ……半分は和姦だったけどね 僕もセックスに興味があったから嫌じゃなかった」

 そこまで言ってから卓巳は恥ずかしそうに上目使いで元木をみつめる。そしてため息をひとつついてから決心したように又、話だした。

 「でもそれだけじゃ終わらなかった。アイツは仲間を呼んでいたんだ。途中から他の2人が加わって……。抵抗したなんてもんじゃない。もう、めちゃくちゃ暴れて……後輩だったけどどいつもガタイの良い奴ばかりで……抵抗なんかしたって結果は同じだった。 3人がかりで好き放題されて、僕の心は壊れてしまった。何も感じないような振りをするのが精一杯だったけど、あの日から確実に僕は変わったね。セックスなんてたいした事ではないって思おうとしていたな」

 「あの人が好きだったんだね?」

 「……ん……そうだったのかもしれない。でもあの時は憎しみとかいろんな感情がぐちゃぐちゃだったからよく覚えていないんだ……」

 森川は話す事すら苦しそうだった。

 はたして自分がこれ以上卓巳の心に踏み込んで良いのか?

 ただ、卓巳を苦しめるだけではないのか?

 カウンセラーでもないのに?

 卓巳の心の闇を聞いて自分が冷静に判断し、彼を助けてやる力が自分にあるのか?

 大沢は自問自答し始めたちょうどその時、チャイムが鳴る。

 ルームサービスを頼んでいたか?と大沢がドアを開ける。

 そこに立っていたのはたった今まで話していた中心人物……有賀その人だった。

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