ダイヤモンドダスト2

kohinoor 3



 彼等が寿司やを立ち去った後、殆ど何も食べないまま、2人はその寿司やを後にした。

 食欲なんかどこかに吹き飛んでしまった。

 まるで、お通夜のように二人は無言で歩き出す。

 「どうして、名刺を交換しなかったんです?」

 思いきって元木は呟いた。

 「彼には良い思い出がないからね。忘れたいんだ」

 いっそ心の中にあるものをさらけだした方が忘れるって事はうまくいくのに。

 元木はそう思ったが、その時はとても言えるような雰囲気ではなく、小さくため息をついただけだった。 せっかく二人で旅行にきてるのになんてことだろう。

 ホテルにチェックインすると、元木は今日だけでいったい何度ついたかわからないような ため息をまた、深くついた。

 「祐也……」

 後ろから森川がそっと元木を抱き締める。

 いつもの優しい、そして濡れるような色っぽい瞳。

 この卓巳の顔に元木は弱いのだ。そっと目を閉じる。唇が降り微かな吐息が元木の唇を くすぐってゆく。しらずに元木の唇はそれを迎えるようにおずおずと開かれそれと同時に そっと瞳を閉じた。

 触れるだけだったものから しだいに大胆に舌を絡めるキスに移行してゆく間、

 元木は森川の愛撫にのめり込んでいく……。だが、いつもの馴れた愛撫とは違うリズムに ふと我に帰って目を開けた。

 森川は明らかに心はここにあらずという雰囲気で遠くを見つめ元木の同じ場所を同じリズムで 愛撫していたのだった。

 がばっと元木が起き上がると、びくっとしたように森川は元木をみつめ、何か言おうとして、手を元木の方にのばす。

 「ちがうんだ……祐也……」

 「森川さん……」

 「ごめん」

 「悪いと思うならさっきの男の人の事話してくれますよね?」

 「さっきの人って……」

 「今さら、何をとぼけるんです?有賀さんっていいましたか?彼とあってから、いつもの森川さんじゃない」

 「祐也が聞いて楽しい話じゃない」

 「知ってますよ。多分、不愉快な気持ちになるでしょう。でもせっかくやってきた二人だけの旅行で 他の男に心を奪われている方がやりきれません」

 元木は悪戯っぽく笑ってみせた。

 森川は覚悟を決めて話し出した。

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