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葛西さんの家は玄関の先にこども部屋がある。 僕らが家につくと小学生らしい男の子が部屋から飛び出してきた。 う……っ!すごい絵に描いたような美少年じゃないか?その上葛西さんに似てるし……。 「駿策!今度から時々お母さんに変わって料理を作ってくれる陣平くんだ。 仕事の邪魔をしちゃいけないぞ」 「こんにちは。駿策です」 ぺこりとお辞儀した彼は、料理を作りに来た俺を期待に満ちたキラキラした瞳で見つめている。 「今夜はオムライスだぞ!お父さんはまだ仕事があるからまた、戻らなくちゃいけないけど お前は陣平君と食べればいい」 「わ〜〜い!!!」 本当に駿策くんは嬉しそうだ。来てよかったなと思う。 だが葛西さんちに着くと、まず掃除から始めなければいけない。 「いいから、放っておいてくれ」 彼はそういうが俺はどうも落ち着けないのだ。 料理をしながら、掃除をする俺をみて、感心したように葛西さんは言う。 「やっぱり一流商社に勤めるやつは違うな……仕事に卒がない」 そう言われるとくすぐったくて、思わず言い訳じみた言い方をしてしまう。 「好きなんです。料理が!」 そういって、オムライスにつけ合わせるバルサミコ酢シーフードサラダを差し出した。 「でも、佐野君は仕事もばりばり、ホッケーも上手だしその上ハンサムだしな」 「やだな、葛西部長……ハンサムって関係ないでしょう?」 照れながらも俺は包丁を持つ手を休めない。 「さぞかし、女にもてるんだろうと思ってさ」 「え〜〜部長は奥さんも可愛い駿策くんもいて充分じゃないですか?」 「まぁな……でも女房がいなくなると結構辛いよ。特に精神的にな」 「そうですか……」 そういいつつ俺は一つめのオムライスを駿策クンに差し出した。 「お父さん、お仕事あるから先に食べて」 健気な台詞に俺の胸がつまる。今時の子供っていっても、ちゃんとした両親に育てられれば こんな良い子に育つのか……。 「悪いな……お〜〜!うめ〜〜〜!」 葛西さんは口をもぐもぐさせながら嬉しそうに俺をみて親指を立てる。 駿策くんにすこし小さめのオムライスを差し出すとやはり一口食べて 「レストランで食べるよりずっと美味しい!」 そういって俺ににっこり笑った。 入院中の奥さんは幸せ者だ……俺は二人のあどけない表情を見ながらちょっとだけ切ない気持ちを噛み締めていた。 そうして俺は殆ど毎日の様に葛西部長の家に入り浸る事が多くなった。 口さがないやつらは「そこまでして仕事をとりたいのかよ」などと陰口を言っていたが 負け犬の遠吠えなんか気にしちゃいない。 それより俺がショックだったのはホッケーの練習試合でアリーナで休憩をとっていた時に聞いた葛西さんの噂だった。ごつい男二人から葛西さんの名前が出て俺の耳はダンボになった。 「あの葛西部長ってなかなかやり手だよな」 「だけどさ、あの人と一緒に温泉で風呂に入った時さ……」 「……なんだよ」 「もともと葛西さんって小さいけど筋肉はあるじゃん。だからさ、ちょっと興味があってちらっと後ろ姿みたらさ……」 「……おい〜勿体つけんなよ」 「あの人、色は真っ白でその上すね毛もないんだぜ」 「だから?」 「他とあまりにも葛西さんだけ違って……俺、変な気持ちになりそうになったよ」 「あはは、まさかお前!」 「勃っちゃったよ」 「わははは……あの人なんか可愛いもんな。以外と若い頃にそんな経験ありそうじゃね?」 「言えてる……」 それを聞いた俺はそのまま『調子が悪い』と言って這う這うの態でその場を逃げるように立ち去った。 急いで自室に戻るとシャワーを浴びながらなんとかとんでもない事になっている自分の欲望を宥めていた。 |