KARATE(クリスマス番外)



 本格的に寒い毎日、そろそろマフラーの1枚くらい欲しくなる季節だ。 それが恋人からの贈り物なら最高だと思うけれど、そんな事を素直に言えるなら 羽生雄斗の人生はもっと生きやすかったに違い無い。

 それでも、雄斗が素直ではない分だけ、同居してる恋人の羽鷲竜斗が特別に素直で 滅多に人を疑う事がない男だから自分達はうまくいってるのかもしれない。 そう……雄斗は口には出せないけれど感謝はしてるのだ。  

 確かに派手なホスト顔のくせに竜斗はどちらかというと地味な性格だった。 わがままで、素直じゃない自分をいつも大きな包容力で包んでくれている。 確かに感謝はしているのだけれど、今さら何かをするなんて妙に照れてしまうのだ。 だからこそクリスマスに乗じて料理が趣味というリュウに実は贈ろうと思っているあるものがあった。

 しかしそんなこんなと、いろいろ迷ってるうちにユウはとんでもなく忙しい時期に入っていた。期末テストの採点と通知表の為の成績表一覧を出さなければならない。 土日はクラブの指導があるし、しかも竜斗が手作りの昼食を用意してくれているから、 ゆっくりと買い物もできない。第一包丁ってどこで買えばいいんだろう?

 「えぇ〜〜い、面倒だ!」

 そうかけ声をかけて雄斗は今日の買い物を諦めて取りあえず腹筋を始めた。ちょうどそこに竜斗がよってきたのでびくっとする。

 「なに?」

 嬉しそうな表情で竜斗が徐に髪を掴むと引っ張るようにユウの髪を梳く。

 「なんだよ?」

 「髪が伸びたね」

 そのままぐいっと前髪もアップして後ろで髪を束ねるとリュウはぱっと顔を輝かせる。

 「いい!こうすると少年剣士みたい」

 また、顔の話か……ユウは脱力した。

 「お前な……喧嘩を売ってる?」

 それを無視してまだ、雄斗の髪で遊びながら思いだしたように聞いてきた。

 「クリスマスイブって早く帰られるか?」

 「平日だろ?」

 無理無理と言おうとしてはっと気がつくと、竜斗のじ〜っとした冷めた瞳と目が合ってしまう。

 「ん……そうだな。たぶん……」取りあえず、雄斗は言葉を濁そうとしたがリュウは畳み掛けるように言った。

 「中学生だって親とクリスマスを楽しみにしてるよ。部活は休めば?」

 「ん……多分無理」

 そう曖昧にいった雄斗を竜斗は冷たい瞳でまじっと見た。

 「そう……じゃあいい……光田に誘われてるから」

 「な、なんだって?」

 「ひとりでクリスマス過ごすより好きじゃなくても誰かと過ごす方がいい」

 「……お前のおばあさんがいるだろう」

 「おばあさまはおじいさまと過ごすに決まってるだろう?」

 「じゃ、おやじさんは?」

 「彼女と過ごすさ。そんな事どうでもいいじゃないか。どうせユウは来られないし。 光田が有賀さんを誘ったけど断られて淋しいから、ユウが忙しかったら食事だけでもお願いしますって 言われてるんだ」

 「……っ前、やっぱり喧嘩売ってるだろう?」

 「そう?別にいいじゃないか。光田は同僚だしクリスマスに一人でなんかいたくないのは俺と一緒だよ。大事な仕事だし頑張れよ」

 竜斗はそういうと夕御飯の食器を食器洗浄機にがちゃがちゃと音がなるほど乱暴に入れた。 うそだろ?雄斗は絶句していた。部活は7時に終わる。急いで帰れば外で食事だってできるはずだ。

 だが、竜斗が光田の名前を出した事が腹立たしい。光田が前から竜斗が気に入ってモーションをかけているのをユウが面白く思っていないのを竜だって知ってるはずだ。

 知っていてそういうなんて、雄斗は腹が立ってしかたなかった。

 自分だって仕事休めといえば露骨に嫌な顔をするじゃないか?まるで試されてるようで気に入らない。

 「じゃあ、いけよ。光田と!」

 「あぁいくよ。楽しんでくるさ」

 二人とも完全にムキになっていた。

 そうはいいつつ、雄斗はこっそりリュウの顔色を盗み見る。今日はいつもは折れてくるリュウが意地でもおれて来ないだろうと気がついていた。

 しかたない……この手は使いたく無かったが……。

 「じゃ……俺はこの部屋で一人で食事すればいいんだな……」

 力無くユウが呟く。

 「仕事が終わるまで待っていてくれないのか……?いったいいつプレゼントを渡せばいいんだよ?」

 俯き気味で雄斗が斜下を向く。自然に動きが止まった竜斗は、怒ったように睨んでからがばっと雄斗の肩を抱いた。

 「ユウはずるい……」

 そういってそっと雄斗の顎を上に向ける。雄斗がそっと上目使いにリュウを見上げてからそっと 瞼を閉じた。

 「ずるい……」

 キスをしながらリュウはため息をつく。可愛いって言われて腹をたてる癖に可愛さを武器に使うなんて。

 「いいよ。しかたない……光田は断る……ユウを待ってればいいんだろ?……そのかわり夜は俺が王様ね」

 ユウはぎくっとした。どうやら墓穴を掘ったらしい。

 「そんな裏技を使うんだから当然だよな」

 GWに恥ずかしい事をされた事を思いだし雄斗の口が歪む……が、リュウと光田がクリスマスディナーを一緒に食べるよりはずっといい。

 だけどホテルのクリスマスディナー?それならプレゼントを渡すのに包丁はやっぱりまずいよな? リュウならその場で開けたりしそうだ。そうしたら店で見た人は吃驚するに違い無い。警察でも呼ばれて大事になったら困るし……

 あぁ……だけど何を買えばいいんだろう?プレゼントを渡すといった手前、人前で渡せるプレゼントを考えなければいけない。もう一週間もないのに……。

 嬉しそうなリュウとは対照的にこれからの忙しい毎日とイブの夜を思うと頭をかかえたくなる雄斗だった。





『イブの夜』を書いた方がいいですか?(笑)

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