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雪だ…たしかに雪が舞い降りている。どうりで寒いはずだ。 クリスマスが近いせいか窓からツリーの光が瞬いている家や、庭いっぱいにデコレーションライトで 眩く輝く家も増えてきたような気がして年の瀬がいよいよ迫っているのだと自覚させられる。 自分のアパートの前に辿り着いてふと見上げると窓から漏れる灯りに俺はほこっと胸が暖かくなる。 たぶん、北埜が来てるのだ。俺達なぜか最近、毎週のように週末を過ごしている。 いつもふたりだけでいると良い雰囲気にはなってエッチっぽいことはいろいろしてるのだが、最後まではいった事が無い。 だいたいは北埜が合鍵を使って俺の部屋に入り、冷蔵庫の中にいろいろ買い物をしておいてくれて夕飯なんか作って待っていてくれたりする。それが金曜日。 少しいちゃいちゃしてからビデオで映画をみたり、相手の意見を聞きながらレポートをまとめたりする。一緒にいるのはすごく楽しい。 だけどもうちょっと先まで進みたいと思うのは俺だけなのだろうか? 最初に経験不足を指摘されてからなんとなく、俺の方から誘いずらい。北埜は澄ました顔をしているし、俺は時々北埜と一緒にいる時間が少しだけ辛くなる日もある。 「ただいま……」 自分の部屋にただいまなんて帰るのはちょっとだけ照れる。 「お帰り今夜はシチューだよ」 嬉しいんだけど、なんかな……俺はため息をつく。 最後までしてるわけでもないのに、なんだか俺達夫婦みたいに馴染んでる。 これって問題ありだよな。 「なんかあったの?ゼミで……」 「何もねーよ」 あたりを見回すと俺の部屋はピカピカだ。だんだん俺の部屋じゃなくなってくるみたいで 少しだけ居心地が悪い。 「このまえ、掃除したばかりなのにもうぐちゃぐちゃだったよ」 北埜がすこしだけおどけた感じで言う。 でも俺はなぜかカチンときた。 「俺はぐちゃぐちゃでもいいんだよ」 「喜一……」 「お前が勝手にやってるんだろ……」 俺は照れもあってそういってから北埜を振り返ると 北埜の瞳が燃え上がっていた。昔の野球アニメにこんなシーンがあったと俺は思って思わず後ずさる。 「そうだ、勝手にやって悪かったな」 北埜はそういってコートを肩に引っ掛けた。 「帰るのか?」 慌てふためいて俺はそういうと後ろから北埜を抱き締めた。 「ずっとまっていたのに喧嘩を売ってくるし……」 「帰るな……帰っちゃダメだ」 小さく北埜がため息をつく。 「……喜一……本当は俺の事迷惑じゃねーの?」 北埜がわざとタメ口をたたいて振り返った。 「……流星……エッチな事しようか?」 俺もわざとおどけてみせる。 とたんに「好きだ……」そういって北埜は俺に覆いかぶさってきた。 おい、おい、おい!覆いかぶさるのは俺の仕事だって! すかさず俺が北埜をひっくり返してぐっと体重をかけると北埜は急におとなしくなった。 キスをしながらネットで買った潤滑油を取り出す。男は濡れないからこれを使うらしい。 着々と準備する俺に複雑そうな瞳のまま北埜は呟いた。 「喜一は本当は女の子が好きなんだろう?僕が部屋を片付けると女の子を連れ込みにくくなっちゃうのか?」 俺は無言で服を脱がせてゆく。 「それなら僕はもうここに来ない……」 北埜はそういって瞳を潤ませる。 「女の子の代わりでいい。お持ち帰りされる女の子になれたらそれでいいって思っていたけど。 僕ってやっぱり欲張りなんだな。最後までしたらもう、僕と会ってくれないんだろう? 男とやるエッチがどんなか興味があるだけなんだろう?」 北埜はそういって俺にぐいぐいしがみついていた。 肩に北埜の涙が沁みていく。 こんな事を北埜に言わせるなんて 俺って最低かもしれない。 それなのに俺の口から出てきたのは信じられない言葉だった。 「お前ってサイテ−。それじゃあ俺がケダモノみたいじゃないか?」 きょとんとしている北埜に俺は軽くキスをした。 「クリスマスイブはちゃんとホテルに予約とってあるぜ。今まで女にそんなことしたことなんか ないからな」 みるみるうちに北埜の顔が歪む。ホテルでエッチは嫌だったのか? 「好きでいていいのかな?まだ喜一の事、好きでも迷惑じゃ無いのかな」 「ばかだな……」 心の中で俺だって惚れてるんだよと呟く。 心の中で言ったって聞こえるわけないけど。 泣いてる北埜をどうこうすることはさすがの俺もできなくて、 また今夜もお預けらしい。 本当にイブの夜には本懐を遂げられるのか、少しだけ心配な俺だった。 |